センター事業団 浦安地域福祉事業所(千葉県浦安市)
生活困窮世帯の子どもたちを対象にした「学習支援事業」は、参加する子どもたちの居場所となっていることが知られてきたため、様々な自治体が実施に踏み切るようになりました。
学習支援は子どもに「勉強を教える」ことだけでなく、スタッフやボランティアとして働いてくれる地域の人たちが子どもたちの話し相手になってくれることの方が重要です。
子どもから教えられ、学び、変わる
ボランティアに来てくれる現役大学生は、食べることに苦労したことがありません。子どもたちが、「学校から帰ると3人の姉弟の面倒を見なければならない」とか、「自分で晩御飯を作らなければならない」といった話を屈託なく笑いながら話します。
大学生たちは、驚き、真摯に耳を傾けます。一緒に悩んでしまう学生もいます。学習支援の場が日本の生の現実を学ぶ場となり、自分たちの将来について考え直す機会になっています。
若者が子どもたちからエネルギーをもらう
大学を出た後、2年間引きこもりだった若者がいました。彼は始めて学習支援にボランティアに来た日、何もできず2時間が過ぎました。次に来たとき、子どもたちの間を回るようになりました。中学生たちは「恋人いる?」「結婚してる?」「趣味は何?」といった質問をする一方、「暗いね、人生楽しくないでしょ?」といった言葉を辛らつに彼に投げかけました。
それでも彼は次のイベントに来てくれました。子どもたちと一緒にゲームをしたあと、「次から毎回参加したい」と言ってきました。今の彼はワーカーズコープの組合員となり、今は受託した市の食堂の調理チーフになって働いています。
学習支援事業は子どもたちの支援ではありますが、実は大人たちも子どもたちからエネルギーをもらっています。
大人が変わり、豊かな地域へ
自治体職員の方も毎回学習支援ボランティアやイベントに参加します。「役所では知ることができない、自分たちの地域に暮らす子どもの様子を知ることができる」- 今後の行政にも活かされていくはずです。
地域で公民館活動や子ども食堂を運営している人たちが、住民ボランティアになります。「子どもたちに何かしていきたい」「話相手や遊び相手ならできる」と参加してくれます。遊びやイベントも積極的に提案してくれます。
学習支援事業は、子どもの支援だけではなく、親も、家庭も、そして地域にもかかわりを広げる「丸ごと支援」です。かかわる皆が元気になり、地域が活き活きと変わってきています。
(所長 今井道雄)