センター事業団 谷山事業所(鹿児島県)
生協病院の清掃業務が中心の谷山事業所では、とにかく組合員の高齢化が進んでいました。募集をしても若い人の応募がなく、負担が増え、みんな疲れていました。
そんな中、地域で働くことに困難を抱える若者の体験の受け入れを依頼されました。最初は「簡単な作業から始めれば、なんとかなるだろう。若い戦力が増えるかも」と、ちょっと簡単に考えていたかもしれません。
受け入れを通じて知った若者の現状
このことで、沢山の若者の現実に触れることになりました。派遣切りに合い続けたり、競争社会の中で排除されたり、親の愛情が不足したり、学校教育から遠ざかったり・・・さまざまな困難を抱える若者たちの過去を知ってしまいました。
このような経験をした若者はコミュニケーションが苦手になります。言葉遣い・上下関係・お金をもらいチームワークを発揮して仕事をするということを学ぶ機会が奪われてきました。そして、そうならざるをえなかった若者に、共に働くことのできる環境をつくることこそ、今かかわる大人の責任だと考えるようになりました。
今を生きる為にできる事が現場にはある。私にできることがある
今まで自分を表現できず持っている能力を知らず、発揮しきれずにいる。そんな若者たちが存分に力を発揮できる職場になりたいと思いました。埋もれた能力を自分の事業所で発揮してもらえば、こんなに楽しみなことはありません。
その若者たちが立ち止まらないためには、敷居を低くする必要がありました。硬くないラフな面接や、遅刻・早退・欠勤・休憩が多くても「いいよいいよ」と言える、ゆるい職場にすること。仕事を分解して、短時間でも働けるようにもしました。
反発から信頼へ
最初は、組合員から反発を受けることもありました。「すべての責任は所長の私が取る」と、ハッタリが必要になったこともありました。病院にも迷惑をかけられないし、現場任せにしてはいけない。当時は相当なプレッシャーでした。
しかし若者が定着し、信頼関係が構築されると、組合員も情が沸いて、なんとか若者に社会で生きていく術を身につけさせたいと、育成に力が入るようになりました。病院側にも若者の受け入れを知ってもらっており、病院職員からのあいさつや、「きれいになりましたね」などの言葉が、若者のがんばりにつながっていきました。いまでは、若者が病院から直接仕事をお願いされたり、交渉の場で発言したりと、若者たちの仕事は病院からも必要とされてきています。
若者に教えられた、誰かの為に頑張ること。共に成長できること。
さらに、中高齢の組合員が元気になったことがなによりの変化です。若い人の元気なあいさつが笑顔をもたらし、みんなが意識してあいさつをするようになりました。若者が組合員間の仲介役を担うこともあります。これまで必要最低限の会話しかしなかった組合員も、若者をネタにした会話が増えたり、体調を気にしあったりと、以前にはなかった姿がここにあります。
現場の雰囲気が本当に明るくなりました。中高齢者の方も若者の成長を楽しみにしているように感じますし、成長の糧ともなっています。なにより自分自身が成長できたことに感謝をしています。誰かの為に頑張ること、共に成長できること、目標を持たせてくれることを手に入れる事ができました。
(所長 梛木賢二)