命をいただく感謝を、食育から

 

センター事業団 国分地域福祉事業所ほのぼの(鹿児島県)

 

 国分ほのぼのは、2004年の介護事業開始からスタートし、学童保育、障がい児保育などのケア事業のほか、農業にも挑戦しています。ケアと農業、業種は違いますが、その連携が活動をとても意義深いものにしています。

 

野菜がどう育つのか知らない子どもたち

 ほのぼので学童を開始してしばらくすると、子どもたちの食生活の乱れが見えてきました。お弁当には野菜が少なく、冷凍食品が多いので、給食や食育講座を開始しました。

 その中で、子どもたちは野菜が畑でどう育つのか、あまり理解していないようでした。じゃあ実際に子どもたちと農作物を育ててみよう、と思いました。

 お米作りは、田植え・稲刈りなど、すべて手作業で行います。足踏み脱穀機が活躍します。高学年生が低学年生に教えていくことで、ほとんど子どもたちだけで作業できるようになりました。農家の方の大変さ、助け合ってはたらくことを知って、食べる喜びが何倍にもなりました

 

命を知る日、いただく日


 鶏の唐揚げと生きた鶏が同じ肉だということも、あまり理解されていないようでした。そこで、子どもたちが育てていた鶏3羽をさばいて食す試みをしました。鶏の羽をむしり、肉を切り、途中で「かわいそうだぁー」と泣く子もいました。

 でもしっかりと食べて、全員で「ごちそうさま」が言えました。子どもたちの感想は「毎日たくさんの生き物を食べて成長して、これからは食べるときにいろんな命やいろんな人に感謝して食べたいと思う」ということでした。

 

日々の暮らしを見つめなおすこと

 地域の中では、いろんな世代と出会う場が少なくなっています。できるだけ子どもたちに出会いのきっかけをつくりたいと思っています。

 地域のみなさんに手伝ってもらって、鶏や魚をさばいたり、かまどでご飯を炊いたりします。地域のみなさんには「子どもたちのためなら、いつでも手伝うよ!」といってくれます。子どもたちは地域の大人に見守られ、認められて自信をつけ、主体的になっていきます

 これまで子どもたちに学んでもらおうと活動をしてきました。でも逆に、大人のほうが子どもたちから沢山の気づきをもらったように思います。それは、地域社会のこと、私たちの日々の暮らしを見つめなおすこと。「みんなで力を合わせれば、楽しくてなんでもできるんだよ!」と、子どもたちの活き活きとした言葉や表情が教えてくれたように思います。

 

(所長 岡元ルミ子)