高齢者と若者がホームシェア:お互いが助かる新しい住まいのかたち

 

京都高齢者生活協同組合くらしコープ(京都市北区)

 

「高齢者同士」から、「違う世代が一緒に住む」という発想へ

 高齢者が安心して住み続けられる住まいのあり方ってなんだろう。「住まいづくり研究会」は、そんな問題意識からはじまりました。

 当初は「高齢者同士がともに住む」という発想でしたが、京都府は「大学のまち」でもあります。学生さんも、家賃が大変で、地域の色々な人との交流を望む人も多くいます。京都市が「次世代下宿ソリデール」事業を開始したことを知ったこともあり、これを受託して、高齢夫婦や単身高齢者が学生と一緒に住むというコンセプトの「共住(ともずみ)プロジェクト」をスタートしました。

 
「ソリデール」はフランス語で「連帯」という意味です。2003年、フランスでは猛暑で一人暮らしの高齢者が大勢亡くなりました。一方、パリなどの大都市では若者向けの住宅不足が不足していたことから、NPO団体が中心となって異世代のホームシェアを広めたと言われています。
 

共住を希望する人たちをマッチングします

 高齢者が住む一軒家の空き部屋を、学生に貸し出すことにあたり、お互いの希望条件をヒアリングし、お茶を飲みながらの顔合わせをします。「お試し(数日の同居)」期間を経て、合意に達したら「暮らしのルール」をすり合わせ、借室契約を結びます。

 マッチング1号は、かつて3世代同居でしたが、ご夫婦だけとなり、自宅を歌声サロンや麻雀クラブなど地域のたまり場にされている高齢の組合員と、近隣県から片道1時間半かけて通学していた男子学生でした。これがテレビや新聞で報道され、件数が増えていきました。

 

見えてきた課題と展望

 事業が始まって3年になりました。一緒に住めばうまくいかないことも当然あるので、くらしコープが仲介するケースもあるのですが、不動産仲介業者ではないので仲介料は取れません。こういった事業性の難しさがあるほか、くらしコープは若者の情報に乏しく、それがマッチングの限界にもなっています。

 そこで、京都府、受託事業者、共住されている高齢者および若者、そして企業を含む団体や個人が一緒に情報を集約し資金を確保するような、地域の主体のみんなが仕組みを支えられる母体づくりが求められていると思います。

 「異世代同居」は新しい住まい方の一つとして、とても可能性があります。事例や経験を皆で共有しながら、新たな仕組みを一緒につくっていきたいと考えています。

 

(常務理事 福島広志)