センター事業団 関西事業本部
桜井・大和高田地域福祉事業所(奈良県桜井市/大和高田市)
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昔の農家は、藁や竹からなんでも作りました。草履、袋、鍋敷き…身近な材料から、生活に必要なものをみんな自分で作ってしまう。「百姓」という言葉は百種類の仕事ができるところから生まれたと言います。
今はお店に行けば、色々な道具や小物が沢山並んでいます。便利になりましたが、お金がないと何もできません。身近なちょっとした物すらも、私たちは作れなくなってしまいました。
始まりは「楽しい時間を過ごしたい」
桜井市東老人憩いの家は、奈良県にあります。外出の機会、交流の場、介護予防などのために、健康体操や昼食会を開いてきましたが、2018年6月から「ふれあい文化サロン」を始めました。趣味や興味のあることを持ち寄って、教えたり教えてもらったりしてワイワイと楽しい時間を過ごしましょう、という意図からでした。
さて初めに何をしましょうか、お金もそんなにかけられないし、身近な廃材を使って、簡単に道具も使わず何か出来ないかなって言っていたところ、地場産業の靴下の輪っかを使って「タワシ」を作れるよって言ってくださった方がおられました。
奈良県は、靴下生産日本一!
奈良県は、靴下の製造数の全国シェア60%を占めている一大産地です。桜井市にも靴下の工場があります。その方によると、靴下のつま先を縫い合わせるときに、輪っかになった「ハギレ」というものができるのだそうです。それは普通、そのまま捨ててしまうもので、靴下生産量日本一だけに、そのハギレの量も大変なものです。
靴下生産の副産物である「ハギレ」は、いろんな色があり、柔らかく伸縮性がよくて、捨てるのはもったいない。それにタワシだけじゃなくて、ここから色々なものが作れるんじゃない? なんて話し合って、回数を重ねるうちに、会話も弾み個性あるいろんなものが出来上がってきました。
みんなで試行錯誤して、タワシからなべつかみ、鍋敷きといった平たいものだけでなく、ルームスリッパやバスケットも作れるようになりました。タワシはその素材から、洗剤なしで磨くだけでピカピカにできます。伸縮性に富む材料なので、スリッパも優しくフィットすると好評です。藁や竹とはちょっと違いますが、自分たちで色々作れるって、とてもワクワクすることです。
輪っかでつながる笑顔の輪
最初は「自分たちが楽しいこと」からはじまった輪っかの物語。それがどんどんと「化学反応」で広がっていきました。買っては捨てるという悪循環を抜け出し、破棄されるものを利用し自分たちで作る「環境活動」に、そして地元で生まれる副産物を利用する「地産地消」に結びつきました。最近は販売も進めていて、「地域循環経済」にも挑戦しています。自分たちの活動が、環境やいい社会づくりに役立つ。その感覚は、高齢の方の「社会での役割意識」の形成にもつながっています。
様々なことが交じり合うこの笑顔の絶えない居場所を、今年1月に「ふらっとほ~む輪笑」と改名しました。輪っかのものづくりは、慣れれば誰でも簡単にできます。エコたわしの作り方を動画にしてみました。あなたも笑顔の「輪っか」に入りませんか?
協力:桜井・大和高田地域福祉事業所 所長 井上真理子さん