みんなが活躍できる農業をめざして

宮城県大崎市。JR古川駅から車で10分ほど走ると、豊かな農村地域が広がります。

ここに、多様な人材が活躍できる農業を目指し活動している「農事組合法人 田尻アグリワーカーズ」があります。代表の佐々木洋志さん、職員の伊藤さん、高橋さんにお話をお聞きしました。

田尻アグリワーカーズとは?

農業と福祉の連携によって、障がいのある方、ひきこもり経験者など、多様な人材が活躍できる農業を目指しています。
環境にも配慮をし、バイオマス(廃食用油など)をハウスの暖房機やトラクターの燃料に活用するなど、「エネルギーの地産・地消」も大事にしています。
都市と農村との交流を通じて、生産者と消費者の顔が見える関係づくりも重視しています。

農家の長男として生まれて

佐々木さんがワーカーズコープに入り、アグリワーカーズで働くまでは、紆余曲折があります。


幼少期の佐々木さん

「私は、農業が盛んなこの地域で生まれ育ちました。同級生の半分くらいが農家でした。ただし兼業農家が中心で、専門で農業だけをやっている家は少なかったように思います。当時から、農業だけで生計を立てていくのは大変だと多くの者が感じていて、平日は会社勤めをしながら、週末や農繁期に集中して農業をやっている家庭が多かったです。実際に私の家も、母親が幼稚園教諭でしたので、兼業農家です。

子どもの頃から、自分も大人になったら会社に就職して、農家の仕事は片手間みたいな感じでやっていくだろうなと思っていました。長男でしたので、家と農家は引き継いでいこうと思っていました」

助け合いの仕組み「集落営農」

実家が農家の佐々木さん。そのままアグリワーカーズにつながると思いきや、その後東京の大学に進学します。

「4年間、大学で学んで(遊んで)、卒業後は他の企業に一度就職しました。FXを売ったりとかする会社です。でも楽しくなかったんですよ。要は、どんな仕事でも、自分の会社の商品とかに自信が持てなかったりすると、本当にやらされ仕事になっちゃうので。違う仕事の方がいいかなと思って辞めたんです。それで、1年間実家に帰ってきました」

<自分の会社の商品とかに自信が持てなかったりすると、本当にやらされ仕事になっちゃう>という言葉が印象的です。その後佐々木さんは、ご実家で、「集落営農」という仕組みで、農業のお手伝いをしながら生活をしました。

「20年以上前ですが、当時からみんなで助け合ってやっていく仕組みがあったんです。それが『集落営農』です。数軒の農家が集まって農業法人を作り、大きい機械を揃えて、みなさんが持っている田んぼとか畑とかを協力して作業する。私はそこで1年間アルバイトをしていました。一人ひとりでは限界があるけれど、皆で協力すれば地域の農業を維持していける。アルバイト時代の1年間で、そんなことを感じました。」

実家をベースに<集落営農>を行う佐々木さん。その後、あるきっかけでワーカーズコープと出会いました。