岩手県盛岡市。北上川が流れ、遠くに岩手山がみえる自然豊かなこの町にあるのが就労B型事業所「Caféちゃるむ」(以下ちゃるむ)。
10~50代までの障がいがある利用者が自然由来のグッズを製作・販売しています。所長の吉田さん(写真右)にお話を聞きました。
そこには一人の「困った」から事業を立ち上げるワーカーズコープらしい取り組みがありました。
河原から竹を取ってきてストローに
――ちゃるむは、どのように始まったのですか?
2018年の開設当初はカフェをやっていたんですが、精神障害の利用者さんが多く、調理や接客よりは、静かに手作業をすることに適性があるとわかりました。それで思いついたのが竹ストローの販売です。
ここ数年で脱プラスチックの意識は社会に広がってきたけど、その代わりとなるのは紙ストローとか、結局は使い捨てのものですよね。でも、竹ストローなら、洗って繰り返し使える。買った人は『マイストロー』にして使ってくれています。

バタフライピーを使ったレモンスカッシュと竹ストロー
――もともと環境への意識が高かったんですか?
自然豊かな岩手で生まれ育ったせいでしょうね。小さいころから山や川は身近なもので、林の中でキノコを採ったりして遊んでいました。「ちゃるむ」の近くには雫石川が流れています。その土手沿いの風景をいつも眺めていて、ふと「葦(ヨシ)でストローが作れないかな」と思ったんです。やってみたら、強度が弱かった。そこで矢竹(ヤタケ)でやってみたら、うまくいったんです。

矢竹のたけやぶ

加工する前の矢竹(左)と、ノコギリで切って短くしたもの(右)
――どのような工程を経て、ストローになるのですか?
竹を河原から採ってきて、短く切り、ドリルで穴を開ける。ヤスリをかけて、煮沸消毒します。いろんな工程があり、静かに集中して作業したい人に向いています。竹の緑色が、使い込んでいくうち、だんだんベージュに変わっていくのが綺麗ですよ。
夏にはレモンスカッシュを作ってみました。青色のバタフライピー(無香料無着色)を入れたんですが、酸性のレモンと合わせるとそれが紫色になって神秘的ですよね。レモンは国産。となりの紫波町で、ハウス栽培している人がいたので、さっそく買ってきたんです。
ストロー以外にも、竹コースターもあります。「冷たい飲み物を入れたとき、グラスの汗を吸うのがいい」と好評です。
――山の生態系を壊す…といわれてる竹の意外な活用法ですね。
「誰もが居場所を見つけて、輝くことができる」というのが、ワーカーズの理念ですからね。コジツケっぽいですけど竹にも活躍してもらっています(笑)。

竹にヤスリがけをする利用者さん