岩手県北上市。駅から15分ほどの場所に、小さな二階建てのビルがあります。ここは元々はCDショップ。ガラス張りの入口には、地元の野菜や手作りの小物が並んでいます。今回は「ワーカーズコープ北上笑いのたね事業所」(以下、笑いのたね事業所)のみなさんをご紹介します。
所長、後藤誠子さん
後藤誠子さん
ガラス戸を開けると、ひときわ大きな笑顔を浮かべて近づいてくる女性がいました。この方こそ、笑いのたね事業所の所長、後藤誠子さん(以下、後藤さん)です。
後藤さんは、ご自身のYoutubeやホームページ、えふえむ花巻でのラジオ番組などで積極的に発信しています。シンポジウムや講演では、他の方ならあたりさわりなく終えそうなところでも、とても刺激的な発言をします。果たして、後藤誠子さんとはどんな方なのでしょうか。
「たぶんもう二度と学校には行けない」
匡人さん
笑いのたね事業所設立のそもそものきっかけは、後藤さんの次男、匡人(まさと)さんの不登校でした。匡人さんは、高校生の時に不登校を経験し、単位ギリギリで卒業。その後、東京の専門学校に進学しました。
ところが、冬のある日、後藤さんのもとに匡人さんから突然電話がかかってきました。「たぶんもう二度と学校には行けない」と匡人さんは言いました。後藤さんと言い合いになって電話が切れると、そのあと、全く連絡が取れない日が5日間続きました。
後藤さん「それでもう死んじゃったんじゃないかなって思ってて。その時に私もちょっとパニックっていうか、欝っていうか、おかしくなってて」
そこで後藤さんがしたことは、なんと、Lineに自分で歌った歌を吹き込むということでした。
後藤さん「そしたらその日の夜中に既読がついて、『何?』って返事が息子から返ってきて、良かった生きてたって話なんですけど」
この時、匡人さんは本当に死のうと考えて、ひとり街をさまよい、死に場所を探していたそうです。この返事をきっかけに、ふたたび連絡が取れるようになりました…