「協同労働」を持続可能な地域づくりに生かし、
働く者・市民の自治と連帯を育む、「協同組合」として発展させる
日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)連合会
理事長 古村 伸宏
日本社会は今、大きな転換期を迎えている。これから先の持続可能性が問われ、新しい社会のあり方を見出す必要に迫られている。少子・高齢化や人口集中、産業や福祉のあり方など、こうした課題は相互に関わっており、もはや個別の対策では済まされない。新しい社会ビジョンが求められる中にあって、そもそも社会とは何のために構成されるのか、という根本的な問いが横たわる。そしてこの問いは、人間の本質や人間性の源泉が何なのか、という問いでもある。
私たちワーカーズコープは、35年余の実践の中から「協同労働」という働き方を世に問う段階に入っている。働く者・市民一人ひとりの主体性が高まり発揮されること。人と人が協同の関係で結ばれ、その連帯性が人と社会を豊かに育む。私たちの実践は、失業という問題と格闘する中から、職場づくりを通して働く者の関係を紡ぎ直してきた。人と地域が必要とする「よい仕事」を不断に追求し、「仕事おこし」に取り組む中から、働くことの意味と誇りを見出し、地域の人々の関係を拓いてきた。そして今、協同労働の実践は労働・生活・地域の文化へと、大きな影響を与えようとしている。「自治」と「自由」、「共生」と「寛容」の文化を地域に育み、社会の礎にしていきたいと思う。
私たちが志向してきたワーカーズコープは、「協同労働の協同組合」という世界的にも稀有な、しかし本質的な「協同組合」を地域化・社会化する時代を迎えている。世界的にもその価値が広く知られる「協同組合」の本質を明らかにし、具体的にこれからの地域・社会の重要な存在へと高めることで、協同組合運動全体の活力を高めていくことに寄与できればと願う。それは、人間のあり方や社会の必要性から見たときに、協同組合の優位性や普遍性を指し示すことでもある。
東日本大震災から復興や、沖縄の基地をはじめとする問題、そして疲弊する地方の課題などは、「協同労働の協同組合」が最も役割を果たすべきテーマである。人々の結びつきが極端に弱まり、地域の共同体機能が弱体化した都市においても、大きな役割を果たさなければならない。一つひとつの地域に共通する課題として、「産業」と「労働」を結んだ地域づくりを政策化し、競争と成長の原理とは異なる、「共生と持続性」の原理で回る「コミュニティ経済」を、地域のあらゆる人々、地域の自然・歴史・文化などの資源と結び合わせながら、私たちの協同組合は地域の礎となりたいと願う。
人々の主体性が育まれ、その力が連帯することで社会を変えていく、ここに確信を持ち、協同労働の運動・事業を、人間味あふれる豊かさ・楽しさを持って推進したい。