労協法成立 理事長からのメッセージ

みなさまへ ― 労働者協同組合法が成立しました

誰もが社会の主体者となり快く働く時代をみんなで切り拓こう

本日、第203回臨時国会において、念願の「労働者協同組合法」が全会一致で成立しました。法制化に関わって下さった全ての方々に深く御礼申し上げます。とりわけ、法案をとりまとめ、国会での審議にご尽力いただいた国会議員の皆さん、その作業を支えられた衆議院法制局・厚生労働省の皆さん、早期法制化の決議を上げて下さった地方議会、自治体の皆さん、そして新たな協同組合法制の誕生に希望を託し、ご支援下さった協同組合関係者と労働者福祉団体関係者の皆さんに、改めて感謝申し上げます。

「失業なくせ」という叫びの中から生まれた「事業団」運動。先人たちはこの運動に「よい仕事」という魂を宿しました。信頼され、認められ、愛される仕事を尽くすこと。どうしたら「よい仕事」が実現できるのか。この問いに対する答えが「労働者協同組合」という道でした。働く一人ひとりの主体性と、働く仲間同士の協同性を育む職場づくりに取り組み、その中から一人ひとりの力を発揮する仕事も起こしてきました。また絶えずよい仕事と地域・社会のあり方を切り結び、労働の誇りと生命の尊厳を問い合ってきました。こうした努力と探求の上に、法制化という偉業が成し遂げられたことを、1万5000人余の全国の仲間たちと喜び合い、先人たちを尊びたいと思います。

「労働者協同組合」は、地域の持続可能性と人々の生存の危機の時代に、本来の社会のあり方を問い、つくり直す存在として公的に登場しました。今、社会は新型コロナウイルス感染症の世界的パンデミックの中にあり、私たちは出口の見えない不安と混乱のさなかを生きています。その中で「労働者協同組合法」が日本に誕生したことの必然性を感じずにはいられません。法律の意図するものは、単に新たな協同組合の仕組みづくりに止まらず、「自治」「人権」「民主主義」といった、あるべき社会の原理を取り戻す挑戦と受け止めています。

私たちはまだまだ小さな存在ですが、「働く」と「暮らす」を結び直し、「競争」から「協同」へと切り替え、豊かな関係性の中で人間性を取り戻そうと奮闘してきました。また、大量生産・大量消費・大量廃棄を推し進め、地球を破局的な事態にまで追い込んできた人間の生きざまと社会のあり方を、根本から問い直そうとしてきました。「小さな存在の大きな挑戦」だったと思います。

私たちが40年かけて磨き上げた「協同労働」という宝が、社会全体の宝となり、みんなの手に渡る時代、多くの人々がワーカーズコープをつくり、協同労働が身近になる時代が始まります。だれもがこの社会の主体者となり快く働く時代を、みんなで力一杯切り拓いていきましょう。

 一人として無駄な生命はこの世に存在しない。その生命が輝く営みが「働く」ということ。
 働くことに誇りあれ。
 働くことに未来あれ。
 「協同労働運動」の新たな幕が開く。
 

2020年12月4日
日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)連合会 理事長 古村伸宏