労働者協同組合(ワーカーズコープ)とは
ワーカーズコープは、働く人びとや市民がみんなで出資し、経営にみんなで参加し民主的に事業を運営し、責任を分かち合って、人と地域に役立つ仕事を自分たちでつくる協同組合です。
働く人たち、サービスを利用する利用者や家族、地域に住む人たちと“協同”しながら、みんなで事業を運営します。そして、意見を出し合い、話し合いをしながら、新しい仕事や地域活動に挑戦します。
みんなで協同し、「ともに生き、ともに働く」社会をつくる『協同労働』を地域のみなさんに伝え、誰もが安心して暮らせるまちづくりを目指しています。
運動・事業の理念
私たちは40年以上、地域にとってのよい仕事は何か、働く人が自分らしく、主体者となって働くにはどうすればいいかを問い続けてきました。
働く私たちが主体者となって、仕事を通して成長・発展できる働き方を探す中で、『協同労働』という働きかたをつくり、“労働者協同組合(ワーカーズコープ)”という組織のあり方を創り出してきました。
病院清掃から始まった事業は、現在、子育て・ケア・1次産業・若者・困窮者支援等の多様な分野へと広がっています。事業が拡大する中でも、私たちはみんなで出資し、みんなで経営する『全組合員経営』を実践してきました。
そして、みんなで協力し協同の力でさまざまな分野の仕事に挑戦し、私たちの暮らし全般に関わる仕事へと事業分野が広がっています。また、地域福祉や子育て、公共サービスなど、暮らしを支える事業を行う中で利用者や地域の人たちと協力・協同することの大切さを日々学んでいます。
私たちがめざす『社会連帯経営』は、組合員だけが地域づくりに踏み出すのではなく、日々出会う地域に暮らすすべての人が地域課題に関わりを持ち、協同・連帯しながら地域を再生・発展させるための経営目標です。
協同労働の協同組合の原則
宣 言
私たちは、発見した。 雇われるのではなく、主体者として、 協同・連帯して働く 「協同労働」という世界。 一人ひとりが主人公となる事業体をつくり、 生活と地域の必要・困難を、働くことにつなげ、 みんなで出資し、民主的に経営し、責任を分かち合う。 そんな新しい働き方だ。
私たちは、知った。 話し合いを深めれば深めるほど、 切実に求められる仕事をおこせばおこすほど、 労働が自由で創造的な活動になればなるほど、 人間は人間らしく成長・発達できる、ということを。
私たちは、直面している。 人間、労働、地域、自然の限りなき破壊に。 だからこそ、つくり出したい。 貧困と差別、社会的排除を生まない社会を。 だれもがこころよく働くことができる完全就労社会を。 あたたかな心を通い合わせられる、 平和で豊かな、夢と希望の持てる新しい福祉社会を。
私たちは、宣言する。 「失業・貧乏・戦争をなくす」という先人たちの誓いと、 「相互扶助」「自治と連帯」「公平と公正」という 国際的な協同組合運動の精神を引き継ぎ、 協同労働を基礎にした社会連帯の運動を大きく広げ、 市民自身が地域の主体者・当事者となる、 自立と協同の新しい時代を いま、ここに、共に、切り拓くことを。
原 則
協同労働の協同組合は、共に生き、共に働く社会をめざして、市民が協同・連帯して、人と地域に 必要な仕事をおこし、よい仕事をし、地域社会の主体者になる働き方をめざします。尊厳あるいのち、 人間らしい仕事とくらしを最高の価値とします。
1. 仕事をおこし、よい仕事を発展させます
(1)生活と地域の必要と困難、課題を見出し、人と地域に役立つ仕事をおこします。
(2)働く人の成長と人びとの豊かな関係性を育む、よい仕事を進めます。
(3)仕事と仲間を増やし、働く人の生活の豊かさと幸せの実現をめざします。
2. 自立・協同・連帯の文化を職場と地域に広げます
(1)一人ひとりの主体性を大切に育てる職場と地域をつくります。 (2)建設的な精神で話し合い、学び合い、連帯感を高めながら、みんなが持てる力を発揮します。
(3)お互いを尊重し、一人ひとりの生活と人生を受け止め合える関係をつくります。
(4)人と地域を思いやる「自立・協同・愛」の文化を職場と地域に広げます。
3. 職場と地域の自治力を高め、社会連帯経営を発展させます
(1)全組合員経営を進めます。
①働く人は、基本的に全員が出資し、組合員となり、出資口数にかかわりなく「一人一票」で経営に参加します。
②組合員は、「話し合い」と「情報の共有」を大切にし、事業計画を定め、事業経営を発展させます。
③組合員は、役員やリーダーを基本的に組合員の中から選び、お互いに協力し合います。
(2)社会連帯経営を発展させます。
①組合員と利用者・地域の人びとが、地域づくりの主体者としての連帯性を強め、仕事をおこします。
②地域全体を視野に入れ、全ての世代を結んで地域づくりのネットワークを広げます。
③当事者・市民主体の豊かな公共をめざし、自治体・行政との協同の関係を築きます。
4.持続可能な経営を発展させます
(1)事業の継続性を高め、新たな仕事をおこすために、赤字を出さず、利益を生み出します。
(2)経営の指標と目標をみんなで定め、守ります。
(3)事業高の一定の割合を、事業と運動の発展のための積立金として積み立てます。
(4)期末の剰余を次の順序で配分します。
①「仕事おこし」「学習研修」「福祉共済」の基金
②労働に応じた分配
③出資に対する分配(制限された割合以下で)
(5)積立金と基金は、組合員には分配しない協同の財産(不分割積立金)とし、世代を超えて協同労働と仕事おこしを発展させるために使います。
5 .人と自然が共生する豊かな地域経済をつくり出します
(1)地域の資源を生かし、いのちの基礎となる食・エネルギー・ケアが自給・循環する社会を地域住民と共に創造します。
(2)だれもが安心して集え、役割の持てる居場所を地域につくり出し、総合福祉拠点へと発展させます。
6. 全国連帯を強め、「協同と連帯」のネットワークを広げます
(1)協同労働の協同組合の全国連帯を強め、運動・事業の経験を交流し、学び合います。
(2)各種協同組合との間に「まちづくり・仕事おこし」の提携・協同を強めます。
(3)市民組織や事業体、労働団体、大学・研究所、専門家等と連携を強め、いのち・平和と暮らし、人間らしい労働、基本的人権、民主主義を守り、発展させます。
(4)労働と福祉を中心とする制度・政策をよりよいものにしていきます。
7. 世界の人びととの連帯を強め、「共生と協同」の社会をめざします
(1)ICA(国際協同組合同盟)への結集をはじめとして、国際的な協同組合運動に参加し、発展させます。
(2)協同労働の協同組合とその運動を、東アジアを焦点に世界的に発展させます。
(3)戦争や環境破壊をはじめとする人類の危機を直視し、「資本のグローバル化」による大量失業と人間の排除に対して、「民衆のグローバルな友好・連帯」を強めます
2015/6/27 日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)連合会第36 回定期全国総会にて採択