誰もが安心して働き、暮らせる社会を
ー労働者協同組合法制化のとりくみ
より多くの人や地域に「労働者協同組合」を広げ、「協同労働」という働き方をとおして、地域課題の解決に取り組み、多様な就労の機会を創り、働く仲間や事業・運動に関わる人びとが自分らしく、主体的に働き、暮らすことができる社会を実現するために「労働者協同組合法」の制定を目指しています。

(1)法制化を開始した時期
●1996年
労働者協同組合(ワーカーズコープ)への社会的な関心の高まりを追い風に労働者協同組合法制化のための研究会等が発足
●1998年
10月 労協連「労働者協同組合法制定運動推進本部」開設出陣式を行い、法制定運動の開始を宣言
●2000年
11月 法制化を市民の運動として展開していくために「協同労働の協同組合法の制定をめざす市民会議」(初代会長:大内力東京大学名誉教授)を結成、「協同労働の協同組合」法制化に向けた運動を開始
●2002年
衆議院本会議で坂口力厚生労働大臣(当時)が「働く者の協同組合の法的整備については、現行の各種法人制度との関係をどう整理するか等検討すべき課題もあるので、最終的なとりまとめをおこなっているところ」と答弁
●2003年
厚生労働省「雇用創出企画会議」(第一次報告書)で「雇用創出効果が一番高いNPOや労働者協同組合・ワーカーズ・コレクティブ等のコミュニティビジネス分野では現在の6万人の雇用が10年後に96万人になる」と予測
(2)法制化運動が本格化する時期
●2007年
6月 法制化市民会議会長に笹森清氏(元連合会長、労働者福祉中央協議会会長)が就任。団体賛同署名(1万団体)
制定を求める自治体意見書決議(2007年12月埼玉県北本市の議員員発議による制定を求める意見書決議を皮切りに早期制定を求める意見書決議を自治体で採択、「議員発議」「誓願」「陳情」、2020年3月現在930自治体)。
全国各地で法制化市民集会を開催。ワーカーズ・コレクティブとの法制化運動の連携
●2008年
2月20日 超党派の国会議員連盟「協同出資・協同経営で働く協同組合法を考える議員連盟」設立(最高時250人超)
「多様な働き方の制度整備により、誰でも人たるに値する生活を可能にしなければならない。日本においては、使用者と労働者の関係は労働基準法をはじめとする労働法令によって定められている。しかし、協同出資・協同経営によって共に働くことに対する法律は存在しない。私たちはここに議員連盟を設立し、日本においても新しい働き方が可能になるよう、法制化を含めて検討するため出発するものである」(設立趣意書)
議員連盟役員会で法案要綱案が4案出される。マスコミ、メディアでの注目が広がる(NHK時論公論、ガイアの夜明け、その他ニュース報道等)
(3)法制化を具体化する時期
●2010年
3月 民主党議連の「協同労働の協同組合」(仮称)法要綱(案)が、議員連盟3役会議での議論の遡上に。主要な論点は以下の通り
1)協同労働で働く者の労働者性を認め、労働関係法令の対象とし、労働保険・社会保険の適用を認める。協同で決定した「就労規程」に従い、組合事業に従事する
2)市民の自発的な意志の結集に基づき設立される「準則主義」の採用
3)公益目的の不分割基金「非営利協同基金」を認める
4)働く者以外の、マルチステークホルダー型(出資組合員、利用組合員、ボランタリー組合員、集落・自治体などの地域団体)の組合員制度を認める
5)法の「趣旨」と「目的」
①働く意志のある者、これを支援する市民による就労の場の自発的な創出
②事業活動を通じて、地域社会の発展に寄与する
③働く意欲を持つ誰もがその能力を生かせる社会の実現
4月14日 超党派議員連盟総会で「協同労働の協同組合法案(仮称)要綱」を確認・了承
「この法律は、組合員が出資し、経営し、働く意志のある者による就労機会の自発的な創出を促進するとともに、地域社会の活性化に寄与し、もって働く意志のある者がその有する能力を有効に発揮できる社会の実現に資することを目的とする」(法要綱案)
1)出資・経営・労働を担う三位一体の働き方に労働者性を認め、労働保険の加入等を認める
2)市民の自発的な意思の結集に基づき設立される準則主義の採用
3)非営利協同基金を認める(準備金と就労創出積立金)
その後、法要綱案(2010年4月14日議連総会確認・了承)を巡って、「労働者保護」の問題(集団的労使関係法、最低賃金法等)に対する懸念が労働組合ナショナルセンター、労働弁護団等から出され、市民会議では法制化の基本目標と共に、法制化による社会的な“労働”を巡る影響を加味した、内容の討議を議員連盟に要請
●2011年
6月 民主党議連部会において、労働者協同組合で働く組合員は労基法第9条の労働者との合意に基づく法案要綱を作成
その後議員連盟は、政権交代などの政治的激変を経て休止状態に。
●2012年
国際協同組合年に法制化運動の機運が高まり、「国際協同組合年記念協同組合実行委員会」で作成した「協同組合憲章」において「協同労働型の協同組合法の制定」が掲げられ、同実行委員会主催による「協同労働の協同組合の法制度整備に関する学習会」が開催される。協同組合陣営に理解と賛同を広がる
(4)法制化運動の再起動から法制定へ
●2015年
8月 労協連理事会において「協同労働の協同組合」法制化推進委員会を設置し、再起動に向けた準備を開始。「小規模多機能自治推進ネットワークとの連携を図り、地域運営組織の法人格のあり方についての意見交換・交流を図る」「地域運営組織を協同労働で形成するための法人格・プラットフォームの検討」「協同労働プラットフォーム事業の全国波及の研究会の立ち上げ、協同労働プラットフォーム推進ネットワークの結成へ」「国会議員へのアプローチを自民・公明・民主の3つのルートから拓く」「法制化市民会議の再起動(会長人事)」などについて検討を始める。各政党や議連坂口会長などとの懇談も開始
●2016年
1月 桝屋敬悟衆議院議員を座長とする「地域で活躍する場づくりのための新たな法人制度検討会」が公明党一億総活躍推進本部に設置され、法制化に向けたヒアリング、現場視察などが実施される
5月 「与党協同労働の法制化に関するワーキングチーム(以下、WT)」(座長:田村憲久衆議院議員、座長代理:桝屋敬悟衆議院議員他)が政府与党の政策責任者会議の中に設置され、衆議院法制局第五部、厚生労働省勤労者生活課、当事者団体である労協連、ワーカーズ・コレクティブネットワークジャパン(WNJ)の参加のもと、法案づくりに向けた議論を開始
7月 協同組合憲章の国会決議を目的に旧民主党を中心に組織されていた「協同組合振興研究議員連盟」が「『協同労働の協同組合法』の制定を先行課題とする」と確認した上で、超党派議連として2017年4月に再編強化
●2018年
12月 WTにおいて法案「骨子」について合意
1)労働者協同組合とは、組合員による出資、労働(経営者としてではないが共益権の行使を通じての経営参加)が一体となった協同組合組織であること
2)組合の事業に従事する者は、組合と労働契約(=雇用契約)を締結すること(労働法の適用)
3)設立手続きは準則主義(届け出制)
4)連合会に法人格を付与
5)所轄官庁として、単協は都道府県知事、連合会は厚生労働省の所管に
6)企業組合法人、NPO法人から労働者協同組合への移行規定を設ける(移行措置)」等を確認
●2019年
2月4日 与党政策責任者会議において、法案骨子が了承される(WT座長、座長代理、事務局長の国会議員、厚労省の職員もワーカーズコープの現場視察に参加、法制化の決意を固めていただく)。
2月27日 超党派の「協同組合振興研究議員連盟」役員会において骨子を了承
4月19日 議連総会で「法案要綱」(未定稿)の合意・確認。以降、NPO法人からの移行措置などを巡って、NPO議連、内閣府などとの調整に入る
10月24日 WTの実務者会議において、懸案事項であった「NPO法人から労働者協同組合への移行」について合意がなされ、11月20日に与党政策責任者会議で報告・了承がなされる
12月17日 WTにおいて法案概要が確認され、2020年1月22日に開催された超党派議連において、法案概要が確認・了承され、法案作成の最終段階に向かう
●2020年
2月21日 WTにおいて「労働者協同組合法案(審査済)」(137条、附則32条)が確認・了承され、同日与党政策責任者会議で、同法案が確認・了承される
1)労働者協同組合とは、組合員による出資・意見反映・労働の3つの基本原理に従って、持続可能で活力ある地域社会の実現に資することを目的に事業を行う協同組合組織であること
2)組合の事業に従事する者は、組合と労働契約を締結すること(労働法の適用)
3)設立手続きは準則主義(届け出制)
4)連合会に法人格を付与
5)所轄官庁として、単協は都道府県知事、連合会は厚生労働省の所管に
6)企業組合法人、NPO法人から労働者協同組合への移行規定を設ける(移行措置)」等を確認
以降、確定法案に基づき、各政党の政策責任者クラスの国会議員や、協同組合、労働組合、労働弁護団などでの法案づくりとその内容について報告・協議
3月31日 超党派の協同組合振興研究議員連盟総会において「労働者協同組合法案」(137条、附則32条)が提案される。通常国会での成立をめざし、各党での議論を開始し、各党選出による実務担当者による会議の開催を確認。
2020年4月1日 掲載
※詳細は、日本労働者協同組合連合会35年史を参照
※個人の所属等は、当時のまま掲載しています。