岩手・遠野 放デイから多機能型「わの里」開所 「就労の場」ないなら作ろう
地元生産組合から「手が足りない。助けてほしい」の期待も
岩手県遠野市で2つの放課後等デイサービスを営むワーカーズコープ遠野地域福祉事業所は、多機能型事業所わの里の開所式を7月2日に開き、多田一彦遠野市長、浅沼幸雄市議会議長など78人が参加しました。遠野地福は4年前に、障害のある子どもの保護者や支援者の団体「いっぽいっぽの会」とワーカーズが出会い、放デイぐんぐんはうす、こむこむはうすの2カ所を立ち上げてスタート。当時から、健常者、障がい者の分け隔てのない『就労の場』も作りたいと考え、話し合いや視察なども行ってきました。(本紙 本田真智子)

地域の匠の技も継承、ブランド化も
わの里は、8月1日に就労継続支援B型事業を始め、10月に相談支援事業、来年4月には自立(生活)訓練を始めます。スタッフは6人で、うち3人は障害のある子を持つ保護者です。
就Bの作業は、カフェ、移動販売、製造(弁当、菓子、パンなど)、農業(宮守川上流生産組合との農福連携や、わの里の畑作業)など。
利用予定は8月から4人。すでに体験者が来て、刈った草を片付けたり、ブルーベリーのパック詰めなどの作業で、いきいきと働いています。
特別支援学校からの実習の希望も多く、来年4月から卒業予定者が1人入ることが決まっています。
わの里では、地域の匠(たくみ)の技を学び、次世代に継承していくことも考えており、雛まんじゅう作りの匠、佐藤スガ子さんの講習を受けました。雛まんじゅうはカフェで提供予定。材料となる小豆の栽培も始めています。
農福連携と匠の技の継承を掛け合わせて、「わの里ブランド」を作り、地域を活性化しようとも考えています。
佐藤さんの実家を事務所とカフェに
放デイが立ち上がった時から、「いっぽ」の皆さんと遠野地福の仲間たちは、働く場の選択肢が少ない障害のある人たちのために、「就労の場」を作ろうとずっと考えてきました。
具体的に動き出したのは、一昨年の10月。
ネックになっていたサービス管理責任者の資格を、いっぽの会員、多田和代さんが取ることを決意したことで、ワーカーズといっぽで立ち上げ準備会を作りました。
和の里の場所は、生活指導員の佐藤美保さんの実家(築102年の古民家)。昨夏、北東北事業本部の小澤真本部長に誘われた設計士の白鳥誠さんが訪問し、「納屋を事務所にして、母屋をカフェに改装すればできる」と提案したことから決定しました。
同じ頃、多田さんがワーカーズに入団。「ぐんぐん」で子どもたちの支援をしながら勉強。11月にはサビ管の資格を取得し、少しずつ「就労の場」が具体的になってきました。

「詳しく話を」「集まりに来て」と
今年3月には、佐藤美保さんが遠野小学校を退職し、4月1日からワーカーズの仲間に。
多田さん、佐藤美保さん、前年10月にスタッフになった佐藤秀之さんの3人で、地域回りを始めました。1日に何十軒も回り、わの里の事業内容を説明し、協力債などの協力をお願いしました。
「地元の素敵な農業をする集団」である、宮守川上流生産組合には真っ先に伺い、農福連携をお願いすると、組合長の浅沼さん(市議会議長)は「やることがいろいろあって手が足りない。こちらが助けてもらう」と快諾。
話をした方からは、「どんなもんなんだ、詳しく話を聞かせろ」「うちの部落の集まりに説明しに来てくれ」と声がかかるようになっていきました。
話をすると、「地域の活性化につながるから、期待しているよ」「お弁当楽しみにしている」「カフェができたら絶対行くから。カレー頼むよ」「よそから来た人がやるんじゃなくて、地元の人たちが頑張ってくれることが、俺たち(高齢者)は嬉しいのさ。頼むぞ!」などの期待に満ちた温かい言葉ばかりかけられました。
集まった協力債・賛助金は1000万円を超えました。また、過疎が進む地域で、人が集まる場ができることに、住民らはワクワクしているそうです。
多田さんは「地道な作業って、人を呼ぶって改めて思った」と話しています。
開所式 「地域づくりのお手本になるような展開を」
遠野市上宮守地区多目的集会施設で行われた開所式では、ワーカーズコープの田中羊子理事長が「一集落一農場で、日本中から注目されているこの地に、福祉の拠点が生まれる意味はとても大きい。障害や働きづらさを抱える若い人たちが、高齢化が進む宮守の支え手になって働く。そんなことができたら、どんなに嬉しいだろう。住民の困りごとや、やってみたいこと、残したいことが持ち込まれて、力を合わせて実らせていく拠点に、わの里を育てていけたら」とあいさつ。
来賓の多田一彦市長が「課題であった障害のある子どもたちの卒業後の居場所。これを進めてくれる皆さんを、私も支えていきたい」とあいさつ。

浅沼幸雄市議会議長(宮守川上流生産組合組合長)は「この春、佐藤美保さんたち3人が生産組合に来て、協力してほしいと言われた。『人手が足りない時代、逆に私たちの方が助けてほしい』と答え、どのようなことができるか検討している。地域づくりのお手本になるような活動を展開できるようにしたい」と力を込めました。

サービス管理責任者の多田和代さんが事業とスタッフを紹介しました。
続いて、上宮守の小高い丘の上にあるわの里で内覧会。地元宮守町の和(なごみ)による太鼓演奏、利用予定者も加わってのテープカットも。地域の方、いっぽいっぽの会の皆さん、放デイ利用児童、保護者など多くの方々が集まり、期待の高さをうかがわせました。
