品川でグループホーム「おれんち」開所 -大井地域福祉事業所「いちにのさん」
障害がある人と家族の願いをみんなで叶える
まちづくり講座からスタッフ2人、希望者も2人
ワーカーズコープ東京南部事業本部の大井地域福祉事業所いちにのさんは、グループホーム「おれんち」(東京・品川)の開所式を、7月30日に行い35人が参加しました。重い障害がある息子、青五(せいご)さん(39歳)のために自宅を提供した庄田洋(よう)さん、陽子さんとワーカーズが、たくさんの人たちと力を合わせて、ついに開所の日を迎えました。「おれんち」をきっかけにグループホームをつくりたいという多くの人たちとも出会いました。(本紙 岩田)

庄田さん夫妻は青五さんの将来も考え、20年前からグループホームづくりに取り組んできました。
なかなか進みませんでしたが、知り合いの品川区議、阿部祐美子さん(現、都議)に相談すると、ワーカーズを紹介されました。
洋さんから話を聞いた事業本部は2021年3月、庄田さんたちと品川グループホームプロジェクトを立ち上げ、挑戦を開始。
障害者団体がもっとつながりを強くしなければと、洋さんが昨年から品川区障害者七団体協議会の会長になったことも立ち上げの力になりました。品川区手をつなぐ育成会の佐藤直子会長は300人の会員に呼びかけ、まちづくり講座受講生や入居希望者を募ってくれました。
講座には思いのある受講生が集まり、そこから2人がグループホームのスタッフとして組合員になり、さらに2人の希望者も。入居の申し込みも多く、2カ所目、3カ所目を望む声が集まっています。
開所式 勇気ある一歩に続きたい
今後もいろんな仕事を
開所式は、おれんちの門出(かどで)を祝い全国にグループホームを広げ、仕事おこしの波を起こしていこうとする活気にあふれたものとなりました。
来賓の阿部都議は「ワーカーズコープにはここを第1歩に、品川区でさまざまな事業を展開してもらいたい」と期待し、石田秀男品川区議は「グループホームの入居希望者は多い。たくさんある区の空き家を活用して増やしていけるよう頑張りたい」とあいさつ。城南信用金庫名誉顧問の吉原毅さんもエールを送りました。
そして洋さんは、「ワーカーズの田中羊子理事長とべてるの家(北海道浦河町)の話をした。全国でグループホームをつくるなら手伝えると思うので相談してほしい」と早くも次のグループホームづくりに思いを馳せました。
すると、「1分だけ話を」と港区の障害者の親の会の方が手を上げ、「息子がべてるの家で暮らしている。庄田さんの言葉は障害がある人とその家族の励ましになる」と笑顔でエール。この方は「おれんち」のことを知り、「私たちもワーカーズとつくりたい」と、事業本部と相談しています。
陽子さんは「みなさんから幸せをいただいた。本当に嬉しい」。
スタッフも一言。サービス管理責任者、井上真理子さん(所長)が、「事業所名の『いちにのさん』は、今後もいろんな仕事をつくろうと、仲間と話し合い付けた。『おれんち』はその一歩目」と、千葉利江さんは「娘が24歳で精神疾患に。『労協法フォーラムin品川』に参加し、ワーカーズの地域づくりがに共感。ここで働くことに」と話し、管理者の三宅隆司さん、向達壮吉さん、大山義一さんも抱負を語りました。
手をつなぐ育成会の佐藤直子会長は、「庄田さんの勇気ある一歩に続いていきたい」。 NPO法人どりいみんぐ代表理事、加藤孝さん、改装に関わった設計士の大津謙一さん、高砂建設の佐藤浩二さん、関根一二さんも祝辞を述べました。
「自分たちもつくりたい」と思える場所に
庄田さん夫妻には精神障害がある娘さんもおり、「べてるの家」の向谷地生良理事に相談したことをきっかけに、浦河でもグループホームをつくりたいという思いを持っていることを聞いた田中理事長は、「強い強い庄田さんの覚悟に突き動かされながら、ワーカーズも共に歩み、貴重な経験をさせてもらった。全国にグループホームを切実に求めている人たちがたくさんいる。一人だと諦めてしまうことも、協同労働で力を合わせれば願いを実現できることを示すことができた。浦河でも第1号のワーカーズコープができるのではとワクワクしている。10月1日にいよいよ労協法が施行される。おれんちをみなさんで育て、『あんな場所を自分たちもつくりたい』と思えるような場所にしていただきたい」とあいさつしました。