労協法施行記念「ケアワーカー集会」 日本労協連・センター事業団主催 「ケア」の領域にこそ協同労働を 働き方に悩むケアワーカーに呼びかけ 

本紙 福本

 日本労協連とワーカーズコープ・センター事業団は、「労協法施行記念・ケアワーカー集会 ケアワーカーが地域をつくる、社会を変える」を11月20日、東京・池袋の労協連本部でオンライン併用で開催。大阪大学大学院斉藤弥生教授をコメンテーターに迎え、3事業所の代表がパネルディスカッション。これから協同労働のケアに取り組む人などが意気込みや思いを語る場面も。集会へのアクセス数は170、うち64が一般参加。(本紙 福本)

必要なのは「公共の担い手づくり」

 集会は、制度の現状や厳しい環境のもとで働くケアワーカーに、協同労働とケア労働の親和性の高さと地域づくりの可能性を伝えようと開かれたものです。

 センター事業団田中羊子理事長が基調講演。「ケアワーカーは今、市場原理のもとで競争と効率が求められ、労働環境は本当に厳しい。介護保険も『社会化をめざす』とした制度創設時の理念は反故(ほご)にされ、自立支援と相容れない『介護の市場化』が定着。相次ぐ介護報酬の引き下げにとどまらず、今や『要介護1・2』が切り離されそうな状況。『予防重視』『自立支援』を掲げた国民との約束に反する流れ」と指摘。「ケアの市民化・社会化、ケアの領域における協同労働の実践こそが本物のケアをつくり出す。市民が協同でケアを担う、利用者や住民が地域の支え合いの主体になる、『公共の担い手づくり』こそ求められている」と訴えました。

市民が協同でケアを担う姿が本物と田中理事長

 続いて、「共に生きる、共にはたらく、地域をつくる~協同労働の実践事例」をテーマにパネルディスカッション。ワーカーズの3事業所が報告しました。

 ならしの地域福祉事業所「ケアプランぬくもり」(千葉県)の白石明子さんは「20年近くヘルパーやケアマネとして働いた事業所が閉鎖することになり、自分たちの働く場や利用者230人の引受先が見つからず途方に暮れた。そんな時、『ぬくもり』が事業を継いでくれることになり、前を向くことができた。ワーカーズに移ってからは、自分たちの職場環境はみんなで考え改善できるようになった。私たちが経験した事態はどこでも起こり得る。自分で行動する自覚を持ってやっていきたい」と話しました。 釧路地域福祉事業所ぽっかぽか(北海道)、大槌地域福祉事業所ねまれや(岩手県)も発言しました。

 報告を受けた後、斉藤教授がコメント(別掲)し、2人が協同労働への思いなどを語りました。

自分たちの理想の場所は自分たちで

「ポラーノの椅子」企画準備室 植木あゆみさん(仙台)

 音楽療法士としてワーカーズの現場や労災病院の緩和ケア内科の仕事に携わってきた。福祉と医療の連携が必要と思い、医療・福祉・アートなど専門性の異なる仲間たちと「ポラーノの椅子」を立ち上げた。Not doing、But Being(寄り添うこと)を理念に、がんや難病で闘病する人や高齢者を対象とした地域交流活動を実施。活動を持続させようとワーカーズと話す中、「考えが近い」と判断。協同労働をやってみることに。制度を活用しながら「地域密着型デイサービス」や「放課後等デイサービス」事業を行い、ポラーノの椅子の機能も持たせて取り組む。病気は治せないが、地域とのつながりを処方するスタンスで臨みたい。組織名は宮沢賢治の代表作ポラーノの広場から。「自分たちの理想の場所は自分たちでつくってこそ。誰かに与えられるものではない−込められたメーセージに惹かれた。

協同労働は「愛」のある働き方

訪問看護師 矢吹敦子さん(鹿児島県種子島)

 たった一人の声や願いをみんなで受け止め、実現するための方法をみんなで考える協同労働は『愛』のある働き方。地域で安心して暮らせるサービスの提供拠点をつくれたらと思う。

 10月にワーカーズコープ・センター事業団と協定を締結した(一社)エンドオブライフ・ケア協会小澤竹俊代表理事から、「地域の幸せづくりを一緒に」とするビデオメッセージも寄せられました。

当事者のQOL向上と地域のあり方は密接

 ◆大阪大学大学院斉藤弥生教授のコメント

 介護の仕事のしんどさについては世界的な議論があり、「介護の合理性」という言葉もよく耳にする。しかしそれは経営の論理。利用者と経営者の間に管理が入ってくることを意味する。「ああしてあげたい」「こうしたらいい」という思いがあってこそ介護の仕事は楽しいはずだが、思いが叶わなければ単にしんどいだけの仕事になる。「介護の仕事に合理性を求めると合理的ではなくなる」というノルウェーの介護の研究者の言葉もあり、それを打破する可能性を今日の実践報告で感じた。困っている人を見捨てず、「この人にとって何が必要か」と考えながら生活の質の向上を目指すと、地域やまちのあり方も考えねばならない。田中さんが言う「ケアの領域にこそ協同労働を」ということですね。