関西3大学で「協同労働」の実践伝える 母校教壇に田中さん、韓国出身の崔さんも

西日本 花﨑昌子

 労協センター事業団京滋(けいじ)・関西事業本部が企画・運営する「寄附講座」が昨年秋から桃山学院大、滋賀大、和歌山大の3大学で同時進行。コロナ禍、十分に学生生活を謳歌(おうか)できずにきた学生たちを元気づける頼もしい講師陣たちが登壇。内2つの大学で聴講した。(西日本 花﨑昌子)

 阪神淡路大震災で2年間ボランティア

 桃山学院大学経済学部の寄附講座担当官は梅本哲世名誉教授。出身大学の大教室で70人くらいの学生を前に、「協同でまちをつくる」というタイトルで話すのは、労協ながの事務局長の田中琢磨さん。

桃山学院大学で楽しく講義をする田中さん

 93年に入学し、社会学部で人形劇やバンドをやり、キャンプのお兄さんをしていたと自己紹介。「4畳半の共同アパートの家賃はいくらだったと思うか?」と問いかけた。

 「2万、3万」という小さい声が。「実は1万3千円」と自慢顔。お化け以外何でも出た部屋で壁はボロボロ落ち、ゴミ箱にネズミ出没。そして95年、阪神淡路大震災。

 2年間、ボランティアをする。「仮設住宅でお互いに助け合うのがおもしろいな。そんなのが仕事にできたらいいな」と思っていた。

 97年、センター事業団に入り、神奈川県藤沢市の事業所に。清掃、草刈りがほとんどだったが、介護事業所を立ち上げ、7年間勤めた。

 一般企業に転職し、取締役や有料老人ホームの施設長にもなった。21年、労働者協同組合に戻り、労協ながのに。登頂した山々から写した景色を見せ、「長野県に行ったことは?」と問う。一人がちょこっと手を上げた。「どこに?」「覚えてない、スキーで」「白馬村の方かな、めっちゃいいとこだったでしょ?」と高いテンションで返し、小谷村(おたりむら)での取り組みを紹介。「いかに村を活性化させるか」、その方策をグループごとで話し合ってほしいと提案。

 教授や応援スタッフもグループづくりを助ける。少しずつ声が出始める。発表は「キャンプ場があるなら、川や雪、自然を活かしたサウナを体験できるといい」「なぜそこに住みたくないのか、行きたくないのか考えた。雪が多いなら雪まつりの旅行プランはどうかな」と、若者のアイデアは豊か。

 「ええやん、それいただいて帰ります。今度、村長に言っておきます」と、その都度、大声で相槌をうつ田中さん。「小谷村だけじゃなく、全国で共通の課題が一杯なのです」と、雪かきボランティアのチラシも配った。

 梅本先生が「ものすごく楽しそうにやってる。人のためにやることが仕事になって、自分の生きがい、楽しみになってるのかな。小谷村にいっぺん行ってみたいなあ」と話した。

自立的・自主的に色んなことができる

 滋賀大学経済学部では「働き方を探求するプロジェクト」と題しての講座。担当は地域連携教育推進室の柴田雅美特命教授。彦根市のNPO法人に所属し、子ども食堂、居場所づくりをし、協同総合研究所会員でもある。

滋賀大学経済学部の講座

 ワーカーズの担当は杉江圭一さん(京滋事業本部・栗東ふくろうの家)。

杉江さん

 週1回で15回コースの中盤、柴田さんから「リーダーに求められる資質って何?」「地域で働くってどういうこと」の2つのポイントで依頼を受けた崔亨珞(チェヒョンラク)関西事業本部事務局長。落ち着いた日本語が響き始めた。

崔さん

 韓国で大学1年生の時、炭鉱ストを目の当たりにし、労働問題、社会問題を意識。12年に「協同組合基本法」が成立したこともあって、協同組合を作ってみようかと思ったが、知識がない。先生と相談し、日本の大学へ。

 大阪の大学で日本の協同組合を研究。「かなり企業化されている」と不満を言うと、先生から「あなたが求めているのは労働者協同組合では」と。実際に見ないとわからない。働きながら研究したい。18年、センター事業団に入団し、埼玉の病院清掃の事業所でリーダーに。

 現場では組合員になっていない人が多く、会議は一部の人だけが話して終わり。

 「そんな中で私が現場に求めたのは、『組織の理解と協力』だった。『我々は協同労働の協同組合なんです』と何回も話し、組合員になってもらい、『増資計画を立てて』と訴えた」

 出資証書を見せると「外国の人がお金を出してるのだから、私たちも…」となり、38人ほぼ全員が組合員に。

 「どうでもいい話でも、みんな言いたいことを言い、会議をしませんか」と呼びかけ、話し合うと、人が何を求めているかわかり、支え合いが始まる。
 現場がなくなり、「東埼玉総合事業所」を仲間と立ち上げる。

 講義後、「自分が働く将来とワーカーズコープで働くのとは一致しない」「経営者、社長…自由に生きている人って、この世界にいるのか?協同労働は出資に対してプレッシャーを受けているんで自由ではない?」と率直な意見が。

 崔さんは「仲間と協同・連帯して仕事を起こす、まちづくりに進み、自立的・自主的に色んなことができるという点で、協同労働者と賃金労働者の違いが大きい」と、丁寧に返答した。