九州・沖縄 ブロック 今年度最後の厚労省労協法周知フォーラム 立ち上がった労働者協同組合が登壇

本紙 本田真智子

7回で2000人超、法の理解広まる

 厚生労働省は、九州・沖縄ブロックの8県と共催し、今年度最後となる「労働者協同組合法周知フォーラム」を、2月18日に福岡県中小企業振興センター(福岡市)で開き、会場・オンラインを合わせ354人が参加。昨年10月以降に設立された4つの労働者協同組合が事例紹介で登壇しました。(本紙 本田真智子)

会場の福岡県中小企業振興センターには101人が参加した

「働きながら地域貢献、成長できる」坂本教授

 厚生労働省雇用環境・均等局勤労者生活課 労働者協同組合業務室水野嘉郎室長が、「昨年9月から全国各地でフォーラムを開催。今回の申し込み状況から延べ2000人を大きく超えた人たちに参加いただき、法制度の理解が少しずつ広まっていると感じている。施行後、各地で労協法人が設立され、厚労省の担当者としても非常に嬉しく感じている。労協法人の設立はゴールではなく、スタートではないか。この新しい法人制度が地域社会の活力となり、人と人の温かいつながりを生み出していくものになっていけるよう、厚労省としてしっかりと取り組んでいきたい」とあいさつ。

水野室長

 福岡県福祉労働部労働局石橋裕次局長は、「労働者協同組合が多数設立され、発展し、新しい発想や工夫に基づいた労務管理の手法、働き方が編み出されていくことを大いに期待している」とあいさつしました。

石橋局長

自分たちの職場 すごくいい

坂本教授

 「市民社会組織としての労働者協同組合」のテーマで、関西大学 坂本治也教授が基調講演。「市民社会組織としての労協の特徴は、働きながら地域に貢献する活動を行い、同時に関係する全員が市民としてエンパワーメントされること。そのために、出資、経営(意見反映)、労働にみんなが参加する立て付けになっている。そこがNPOとの違いで、大事なところだ。制度だけでなく、文化として『みんなで』を強調する協同労働を大事にしているのも特徴ではないか」と指摘。ワーカーズコープ・センター事業団九州事業本部・沖縄開発室の働く人に昨年7月に行った「協同労働と社会意識に関するアンケート」調査の結果に触れ、「驚いたのは、ワーカーズで働いている人たちは、自分たちの職場をすごくいいと思っている。職場に対する満足度は高く、そこで働くことで成長を感じている」と紹介しました。

 日本労協連古村伸宏理事長が、当事者団体から見た労協法の概要とポイントを説明しました。

 事例紹介では、4つの労働者協同組合が登壇。立ち上げの経緯や運営の中で感じたことなどを話しました。

 最後に、ワーカーズ・コレクティブ ネットワーク ジャパン藤井恵里代表が「7回のフォーラムで理解が広がったとはいえ、もっと多くの、多様な人々に広く伝わる周知活動の必要性も坂本教授から指摘された。福岡県の方針のように、制度の周知に向けた市町村との連携を、各都道府県でも深め、広げていくことをお願いする」と話しました。

藤井代表

 参加者からは「自治会が労協を立ち上げ、地域づくりをする姿に感動した」「合同会社を立ち上げようと思ったが、労協にする」の感想がありました。

協同労働を体感できる職業訓練も

古村理事長

 現在、18団体の設立登記が完了している。会社員や自営業者が、仲間と労協を立ち上げて、稼ぎとは別に本当にやりたいこと、必要なことをこの仕組みでやろうという副業スタイルが出てきている。また、現在の法人を残しながら、その一部を労協にするところがある。地域の自治組織、自治会や町内会などが、事業の部分を労協にしていく。そういう、ハイブリット型も。

 協同労働はやってみないとわからない面がある。協同労働を体感できるような職業訓練が出てくると活用できるのではないか

厚労省労協法周知フォーラム 事例紹介

事例紹介「協同労働に賛同する仲間となら」

熊本県 あるく 理事長 廣野るみ子さん

廣野さん

 11月21日に設立。事業は障害福祉サービスの生活介護を始める予定で、現在、熊本市に指定申請手続き中。

 偶然つけたテレビ番組で、協同労働が法制化されることを知り、「こんな考え方に賛同して集まる仲間となら何かできそう」という思いを強く抱いた。

 障害児・者の支援に関わっていたが、「あったらいい」「やってあげたい」ということができなかった。少しでも長く住み慣れた場所で希望する生活を続けていくために、もっと大らかに柔軟な支援をしたいと思っていた。

 センター事業団に相談。5人が今の仕事を辞めて、法人設立に向かう意思を固めた。

 全員が社会福祉士、介護福祉士で、障害福祉サービスの経験者。他事業所の見学をしながら、何度も話し合い、自分たちがどのような事業所を目指すのかを決め、まずは生活介護サービスをやることに。熊本市の障害福祉サービス指定枠が1つあることが分かり、指定申請のスケジュールから法人設立の日程が決まっていった。

 立ち上げで、一番時間をかけなければいけないのは、「仲間づくり」と「話し合い」。誰と、どういう思いで、どんなことをしていきたいのかを話し合い、合意することが大変だと思う。

 心地よく働き、心地よく利用できる場所、そんな場所を作りたいと思ったときに、協同労働の考え方だったらできるのではないかと思えた。それが魅力。

 私たちは協同のよいところを十分に生かしながら、みんなから「なんだかホッとするね」と言ってもらえる場所をつくっていきたい。

 連合組織も進めている

神奈川県 ワーカーズ・コレクティブ・キャリー 理事 落合純子さん

落合さん

 1月1日に労働者協同組合に組織変更。

 1992年、生活クラブ神奈川の野菜配送を受託して設立。他に、引き払い部門はっぴい&キャリー、コモンズステーション部門があり、211人で運営している。

 コミュニティ配送を通じて、協同労働を広げ、地域の活性化に貢献していることが、法律の目的と重なっていたことが組織変更の大きな理由だ。

 労協法を活用して、神奈川の生活クラブ委託ワーカーズで、連合組織の形成を進めている。

 やってみないと人に伝わらない

福岡県 ワーカーズコープありあけ 専務理事 堀幸輔さん

堀さん

 センター事業団の所長と兼務だが、小回りのきく働き方を目指して、ありあけを設立。

 ワーカーズコープの指定管理者現場で、外部委託していた清掃を内部でできないかという声が上がっていた。他方、労協法の周知活動の中で、自分たちが立ち上げをやってみないと、人に伝わらないのではないかという意見も出た。

 そこで、自前でやろうとしていた清掃を、新しく労協法人をつくってやったらどうかという話になり、設立することに。立ち上げを進める中で、わかったことが多かった。

 高齢者や働きづらさを感じている人たちが事業をしながら、大きな利益が出なくとも生きがいを感じながら、生涯働き続けることができる職場をつくっていきたい。

 自治会活動の継続性考え

沖縄県 かりまた共働組合 理事 國仲義隆さん

國仲さん

 宮古島市の狩俣自治会の会長もしている。

 自治会活動の継続性を考え、今までボランティアでやっていた地域づくりが仕事になるのが魅力だと、労協を立ち上げることに。11月7日に創立総会、12月9日に法人登記を済ませた。

 組合員は7人で、おむすび・惣菜の製造販売など食の「むすびやチーム」、海と畑を中心にした事業をする「いんぱりチーム」、電気自動車を使っての移動支援や清掃などの「ばぎだまチーム」で事業に取り組む。

 むすびやは、集落センター調理室を活用し、生活困窮者やひとり暮らしの高齢者へのお弁当配食。かりまた幼稚園へのお弁当配食も、保護者の声から担当している。

 年末は、ひとり暮らしの高齢者に年越しそばを配布して好評。「なかなか一人では作れない、持ってきてくれてありがとう」とお礼を言われ、やりがいを感じている。

 いんぱりは、地元の言葉でいんは「海」、ぱりは「畑」のこと。生産調整のために廃棄処分していた新鮮なモズクを、共働組合が直売会を行い地元で販売した。現金収入や販路の拡大にもなり、大変やりがいを感じている。漁師のみなさんが、よいモズクを消費者に届けられて気持ちが変わったというターニングポイントになっている。

 さらに、これまで捨てていた魚を買い取り、捌(さば)いて売ることで、「魚は食べたいけど家で捌くのが面倒だなぁ…」と感じていた地域の方から喜ばれた。これから加工などに力を入れたい。

 ばぎだまは、地元の言葉で分け合い、支え合いの意味が入っている。協同労働の理念とマッチするということで、この名前にした。

 かりまた共働組合の理念は、「新しい働き方で小さな幸せを増やしたい」。その結果、地域をつなぐということ。

 今は7人でやっているが、地域の課題はたくさんあるので、そのポイントを押さえながら、できる人にお願いしながら仕事を増やしていきたい。そして、地域を盛り上げていきたいと考えている。