仙台けやきの杜 鶴ケ谷東児童館 地縁で「朝カフェ」
仙台市宮城野区の鶴ケ谷東マイスクール児童館(以下、鶴ケ谷東児童館(児童クラブを併設)、労協ワーカーズコープ・センター事業団仙台けやきの杜地域福祉事業所が指定管理者)は、まちづくり団体「まるっとつるがや」「つるがや子ども食堂」などの協力を得て、「朝カフェ キッチンつるがや」を行っています。館長の遠藤恵さんたちは「子どもたちには地域の大人の目や手も必要だから、地域と一緒に」と、地域を歩き、やりたいことを話し、つながりをつくり、22年11月に朝カフェをスタート。ここで朝ご飯を食べた子からは、「なんか体が元気になった」の声も聞かれます。取り組みを広げる中で「子どもたちを地域の大人たちと出会わせるのが児童館の役割」と考えるようになっています。(本紙 本田真智子)

「子どもを地域の大人と出会わせるのが役割」
「朝ご飯食べていない」「親も俺も」
鶴ケ谷東児童館の3回目の朝カフェは、12月2日。子どもたちがついたおもちの朝食で、90人の子どもや保護者が集まりました。
仙台市営団地の商店街、鶴ケ谷プラザで朝カフェを始めたのは、22年11月。初回はスクランブルエッグやウインナー、チキンライスなどを提供。2回目は23年3月にウインナーや卵を挟んだロールパンやコーンスープなどを提供しました。
きっかけは、3年前に鶴ケ谷東児童館に移った遠藤さんと八巻真裕美さんが、朝ごはんを食べない子がいると気づいたことです。
ぐたっとしてる子がいて、「どうした?」と聞くと、「朝ごはん食べてないの」と。「え? 毎日朝ごはん食べんの。うちなんて親も俺も食ったことねえ」という子ども同士の会話も耳にしました。
朝ご飯を食べないのが当たり前の家庭や、生活が苦しくて食べるものがない家もあるとわかってきました。
「夏は熱中症になるから、朝ごはん食べておいでよ」と子どもに言い、保護者にもお便りで「朝ごはんを食べてきてくださいね」と載せましたが、なかなか改善されません。
そこで考えたのが朝カフェでした。しかし、すぐには団会議で提案しませんでした。鶴ケ谷東児童館では、地域とのつながりがほとんどなかったからです。
遠藤さんたちが前にいた荒町児童館や連坊小路マイスクール児童館では、町内会や子供会、保護者などがつくる親父の会、地域のさまざまな団体、大学や専門学校の学生などが一緒になって子どもたちを育んでいました。
しかし、鶴谷東小学校の学区では、高齢化が著しく、町内会や子供会は担い手不足で減るばかり。
「児童館だけでいろいろなプログラムを組むことはできるが、地域とつながってこそ、子どもたちに豊かな経験をさせられる」。
遠藤さんはそう考えたのです。
「実現できちゃうんですね」
異動したばかりの頃、区役所の担当者があいさつに来てくれた際に、遠藤さんは居場所など、この地域でやりたいことをいろいろ話しました。すると、「まちづくりの団体があるから」と、「まるっとつるがや」を紹介してくれ、そこからいろいろな人との出会いが広がっていきました。
さらに、催し物やイベントがあると顔を出し、「児童館です。こんなことやりたいんです」と話していると、「だったらこの人と」と、次から次へとつながっていきました。
そして、朝カフェを地域の人たちとやろうと団会議で6人の仲間に提案すると、「えっ、そんなこと本当にできるんですか」と、戸惑いの声が出ました。さらに、「地域とつながるってどういうことか分からない」「何からはじめたらいいか分からない」という率直な言葉も。
実は、ずっとここにいたスタッフは、子どもたちが朝ごはんを食べてこないことに気づいていましたが、特に気にしていなかったのです。「これが子どもの当たり前の姿なんだ」と思っていたそうです。
最初は朝カフェができるのか疑問だった組合員も、1回目の開催後、「実現できちゃうんですね。地域の方々からたくさんの言葉をかけてもらい、この取り組みが必要なことだと肌で感じることができました!」「地域に踏み出す勇気が持てた」と目をキラキラさせて遠藤さんに語ったそうです。毎回、全員で準備して、当日は朝カフェと児童館での子どもの対応と役割分担しています。
仙台けやきの杜地福
児童館、子育て広場、院内保育、居場所など11現場に約150人が働く。
餅つき 全校生徒に便り、全町内会回覧板に
鶴ケ谷東児童館 地縁で「朝カフェ」
お代わりも
3回目の朝カフェは朝8時から餅つき。
初めての子が多く、杵の持ち方などを大人たちがサポートします。「重〜い」の声が出ましたが、あっという間にコツを覚える子が大半。大人たちは「はい」「もう1回」と掛け声。子どもたちは体を寄せ合いながら、つく番を笑顔で待っています。

つきあがったもちを、ボランティアの大人たちがどんどん磯辺、あんこ、きな粉、納豆の味付きもちに。配り始めるとあっという間に長い列ができました。
「あんこもち一択。納豆は好きじゃない」と言っていた男の子は、4種類全部を平らげ、お代わりも。「磯部巻きが最高」「きな粉も美味しい」「お代わりしていいのかな?」そんな声が飛び交います。
食べ終えると鬼ごっこを始め、上着をはだけたり、脱いだり。
「元気だね」「朝ご飯をちゃんと食べると、体が温かくなるからね」
一段落したボランティアの皆さんが、もちを頬張りながら、子どもたちの様子に目を細めていました。

あっという間に手配
今回の企画は、「もち米があるよ。餅つきしない?」という市議の高見のり子さんの提案からでした。
遠藤さんたちは、その場で「やりたい」と返事。日本の伝統や文化に触れる機会が少なくなっている子どもたちに、餅つきを体験させたかったのです。
杵や臼は、まるっとつるがやや高見さんなどが声をかけてくれて、あっという間に手配できました。当日の手伝いも、つるがや子ども食堂の皆さん、民生委員、就労継続支援B型事業所のスタッフ、区役所職員、地域のイベントで出会った人など、どんどん集まってくれました。
広報は鶴ケ谷東児童館が全校生徒に配布する便りやSNS、地域の全町内会の回覧板、掲示板などで行いました。

小さな交流拠点をたくさん
「発想が面白い」
朝カフェには、各方面から大きな共感が寄せられ、鶴谷東小学校の校長からは「朝カフェいいですね! 小学校の空き教室で開催しても楽しいかも」。地域からは「地域の課題に児童館が取り組んでくれてありがたい」「発想が面白い。児童館じゃなきゃこんな考え浮かばない」。
遠藤さんは、朝カフェの取り組みを地域の小・中学校関係者が集まる懇談会で報告。24年度には、看護師の全国大会で紹介することにもなっています。
「いなきゃダメ」
鶴ケ谷東児童館の仲間たちは、月1回のつるがや子ども食堂に手伝いに行きます。まるっとつるがやが年何回か開くミニマルシェにも、工作やミニゲームなどの遊びのブースを出店。

都合が合わずに出店できなかった時、まるっとつるがやの方たちから「いなきゃダメだ。次は児童館の都合に合わせて開催日を決めるから」と言われました。児童館が遊びのブースを出すと子どもたちが来て、人出が増えて活性化するのだそうです。
逆に、児童館まつりではまるっとつるがやの地元学のグループから「江戸時代の湯豆腐」を提供してもらったり、子どもたちを地元の史跡巡りに連れて行ってくれたり。
こうしたイベントを重ねていると、「あ! この前のおじちゃんだ」と馴染みになり、笑顔を見せる子どもも。
「いつか、あの時こういうふうにしてくれたなとか、ちょっとでも思い出して、その子自身の生きる力になっていったらいい。そのためにも、小さな交流の拠点をたくさんつくりたい。地域の誰もが『ここにだったら行ける』という場所がたくさんあったら、互いがもっと出会える」
遠藤さんは力を込めました。