「市民の会」が 制度考えるフォーラム 介護保険 「これ以上の改悪許さない」

本紙 原戸

 一般社団法人日本社会連帯機構や市民、介護保険事業に関わる団体・企業などで構成する、「守ろう!介護保険制度・市民の会」は、フォーラム「介護保険制度のいま・これから」を、1月28日、東京池袋・ワーカーズコープ連合会本部とオンラインで開催。85人が参加しました。東京大学名誉教授でNPO法人ウィメンズアクションネットワーク (WAN)理事長の上野千鶴子さんが記念講演。2024年度の介護保険制度改定を前に、家族や事業者の負担増などの制度改定の問題点を提示し、連携を呼びかけました。(本紙 原戸)

85人が参加。討論で、制度の問題点を深めた
上野さん

上野千鶴子さん記念講演

いざという時に使えないなら“詐欺”

 「市民の会」事務局長の冨田孝好さん(社会連帯機構副理事長)が開催趣旨を説明。

 第1部では、上野さんが 「いま、介護保険制度にどう向き合うか」をテーマに記念講演。

 「ケアの社会化の一歩」である介護保険制度の成立を振り返り、「日本の介護保険は、国際的に見ても優れた制度。この23年の間に現場の経験値が蓄積され、スキルが上がり、人材が育った。在宅介護を支えるため、市民が目の前のニーズに応えて富山型デイサービスなどをつくり出していった。そのことは本当に宝物だと思っている」と指摘。

 一方で、3年ごとに行われる制度改定により、利用者の負担増、軽度者外しが進んでいく現状を示し、「介護保険が使えないとなると、帰結は2つ。1つは、もう一度家族に押し戻す再家族化。介護離職や追い詰められた家族による高齢者の虐待も起きるだろう。もう1つは、足りない分は保険外の自費サービスを買いなさいということになる。強制加入させられて保険料を天引きされた上、いざとなったら使えないなら、“詐欺”である」と糾弾。

 「誰もが下り坂を降りていく、誰もがいつかは弱者になる。安心して認知症になれる社会、障害者になっても殺されない社会をつくりたい。この願いを皆さんと共有したい」と語りました。

介護の市場化を強く批判

 第2部は「保険あって介護なし! これ以上の改悪は許さない」と題して討論。上野さんと全日本民医連事務局次長の林泰則さん、市民の会共同代表で社会連帯機構代表理事の永戸祐三さんの3人が登壇しました。

 永戸さんは介護保険法の理念を振り返り、「当初、自己決定権の尊重、人生の継続性の尊重、残存能力の活用をうちだし、これが介護保険の基礎だとした。軽度を切るというのは、残存能力の活用を捨てることに等しい」と強調。

 上野さんは、「切り捨てといえば、生活援助の切り捨ても。当初から家事の援助は非常に低額に抑えられた。それが今日まで続いている」と指摘。

 林さんも、「財務省の官僚は、『生活援助には個別性はあるが専門性はない』と言っている。この背景には、(介護は)家庭、主婦がやる仕事という見方が根深くあるのでは。家事行為を通じてその人を丸ごと支援していく、個別性をうんと尊重することが、むしろ専門性ではないか。介護の市場化が急速に進んでいるが、これは公的なサービスを縮小させる流れだ」と強く批判。

 上野さんも、「保険外の介護は市場原理そのもの。ケアの質の管理は行われなくなり、介護事故等の問題が出てくるだろう」と警鐘を鳴らしました。

 2024年度の改定で、とりわけ地域でその人らしく暮らすために必要な訪問介護の基本報酬が引き下げられる方針が示されたことについて、「(訪問介護は)最も人手不足で最も困難を抱えている。恐ろしい案」(上野さん)、「怒りというより、ちょっと理解できない。基本報酬というのは、サラリーマンでいうと基本給に当たる」(林さん)と強い危惧を表明しました。

 最後に、政府へのパブリックコメントの提出や、反対声明に賛同する団体・個人の募集が呼びかけられました。(WANのWebサイト:https://wan.or.jp/ 21日まで)

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 「市民の会」は、上野さんの講演詳細や、介護保険制度改正への提言をまとめた冊子を、4月に刊行予定です。