宮城・仙台 センター事業団で訪問看護・通所介護の「ポラーノの椅子」 ”自分たちの協同労働を” 音楽療法士や看護師らワーカーズを選ぶ

本紙 本田真智子

 昨年10月1日にスタートした訪問看護と通所介護を行う労協ワーカーズコープ・センター事業団太白(たいはく)山田地域福祉事業所「ポラーノの椅子」(宮城県仙台市)。医療や福祉の現場で、音楽療法や聞き書きなどをしていた植木亜弓さんや玉井照枝さんたちが、センター事業団に合流して立ち上げました。なぜワーカーズコープを選んだのかを聞こうと、開所して半年過ぎたポラーノの椅子を訪ねました。(本紙 本田真智子)

緩和ケアや心理的サポートも

楽器がたくさん

 宮沢賢治の「ポラーノの広場」の広場を自分たちで創り出そうと命名したポラーノの椅子。

 丘陵地帯にある2階建ての真新しい施設で、1階は通所介護の施設。ウッドデッキに続く大きな掃き出し窓に面したデイルームは明るく、ピアノとキーボード、棚には楽しそうな楽器がたくさん並んでいます。奥には畳のスペースがあり、玉井さんが手がけた聞き書きの冊子が並んだ本棚も。お風呂にベッドと洗面所、クローゼットがついた泊まりができる部屋も2つ。

 2階は訪問看護の事務所です。

ポラーノの椅子。太白区の丘陵地帯にある。庭には利用者と一緒に世話をするオリーブ、トマト、いちごなどが植えられた

本人と家族の希望に

 6人のスタッフでスタートし、現在は訪問看護部門4人、通所介護5人が働いています。看護師や薬剤師、音楽療法士、作業療法士、介護福祉士などの専門家集団です。

 訪問看護は、24時間の対応で日常生活の支援、医療処置、緩和ケアなどをします。病院や連携する訪問診療所などからの紹介で、4月は14人が利用。

 がん末期や難病などの方のケアが多く、本人だけでなく家族の心理的なサポートも。自宅で看取られたいのか、最後は病院で迎えたいのかなど、本人や家族の希望を聞きながら調整する役割もになっています。

 亡くなった方の家族が、「ポラーノの椅子で良かった」と紹介元の医療機関に伝えてくれることで、次の利用者が紹介される場合もあります。

アート活動も

 通所介護には、現在15人が登録。1日の利用定員は10人で、1日の平均利用者数は4~5人。

 利用者が日直になって朝の会。あいさつをしてから好きな歌を歌ったり、体操をしたり。その後は、散歩や園芸、ふまねっと、手芸など、それぞれ趣味の活動をします。

 4月にはお花見週間として毎日お花見に出掛けて、スタッフ手作りのお花見団子に舌鼓を打ちました。

 通所介護の大切な活動にアートがあります。音楽療法として、歌ったり、楽器を演奏したり。初めてピアノを弾いた利用者もいました。新しいことに挑戦する喜びも感じられるようです。絵が上手な人はそれを活かして、楽しみます。

通所介護で音楽療法。利用者たちが演奏を楽しむ。右が所長の植木さん。


 また、がん患者が被る「タオル帽子」作りに取り組み、東北労災病院に寄付しています。その方の今の気持ちや、もしものとき、またこれからをどのように過ごしたいかなどを考える「もしバナゲーム」をやった際に、「人の役に立ちたい」と話した利用者がいたからです。

 利用者の身体機能の維持のための運動プログラムやリハビリと、その人の強み(手芸が得意、仕事をしたいなど)を活かすという、2つのアプローチを心がけています。

活動を続けるために事業を

 病院などで音楽療法士として活躍してきた所長の植木さんは、「音楽療法士は患者さんの言葉にならない想いを聴くことも多い。音楽を通じて病気の自分だけが自分ではないと気づく人も。一方で、いろいろなことができなくなっていくことや、家族に負担をかけるつらさや苦しみにも目を向けていく必要がある。そのために、多職種との連携や学びを深め、自らも変わっていく必要があるという思いがあった」と言います。

 東北労災病院やワーカーズコープと関わる中で、同じような思いを抱えていた玉井さんや小山裕さん(看護師)、松山史子さん(看護師)、佐々木禎史(ていじ)さん(センター・太白だんだん前所長)などと出会い、小さなボランティアグループを結成。「麦の穂音楽隊」を作り、音楽活動を中心に、聞き書きやアート活動など、医療と福祉を結びつけた取り組みをしてきました。

 それらの活動を持続し、事業にしていこうと考えた植木さんたちが選んだのがワーカーズでした。

 「協同労働の理念に共感した。ただ、理念と現場の実情には乖離があるように見えた。悩んだが、企業やNPO法人では自分たちのやりたいことを行うのは難しく、消去法でワーカーズを選んだ。協同労働の理念は、実際素晴らしく『自分たちで創る居場所…世界でただ一人のあなたのための』のポラーノの椅子の理念とも一致している。仲間で相談して、私たちは自分たちの協同労働をつくろうとワーカーズを選んだ」と植木さん。

 ポラーノの椅子は、音楽療法、聞き書き、がんサロンなどのインフォーマルケア(社会連帯活動)と、訪問看護、通所介護などのフォーマルケア(制度活用の事業)の両方を循環させることで、一人ひとりに寄り添い、丸ごとケアする地域包括ケアを目指しています。

 事業を始めて半年、クリスマス会や能登半島地震被災者支援のチャリティー音楽会などで、地域の人やがん患者などと交流。

 「新らしくピカピカだったポラーノの椅子。半年が経過して課題が見えてきた今、その課題や綻びを丁寧に繕う中で、愛着のある作品になっていく。そんな経過を仲間と楽しみながら学んでいきたい」と植木さんは言います。

前列左から、植木さん(所長・音楽療法士)、松山さん(サービス管理者・看護師)、及川奈保美さん(看護師)、佐々木絵里さん(介護福祉士)、後列左から小澤真さん(センター事業団南東北事業本部・本部長)、小山さん(副所長・看護師)、玉井さん(相談員・薬剤師)