インクルーシブ社会の実現を目指して 〜寿町の人々の尊厳と市民(当事者)主権社会の確立のために〜
5月16日に開いた学習会「横浜寿町の自立と協同を考える」(前号既報)での、居住支援法人生涯現役ハウス横浜支部長・大友勝さんの話「インクルーシブ社会の実現を目指して〜寿町の人々の尊厳と市民(当事者)主権社会の確立のために」(大要)を紹介します。(本紙 松沢)
居住支援法人生涯現役ハウス横浜支部長 大友勝さんの話
まず自己紹介。私は宮城県出身。高校を卒業し、20代後半から寿町を中心に日雇い労働者を10年くらい。
1981年、横浜市と住民懇談会と市職員組合の三者協議で、不法占拠状態にあった生活館の一部が寿町勤労者福祉協会に運営委託された。そこの職員として15年ほど働き、学童保育所をつくり、精神障害者やアルコール依存症の方の作業所をつくるなどし、97年に全国精神障害者地域生活支援連合会を設立、10年間代表を務めた。
社会的に排除され無縁に生きる人々
寿町には現在、簡易宿泊所(ドヤ)が113軒あり、宿泊者が5340人いる。部屋数は8036室だから空き部屋が多く、ドヤの経営も厳しい。生活保護受給者は4981人で、高齢化率は52・8%。精神、知的、身体など障がい者が243人。子どもは10人未満。
バブル崩壊以降、寿町は「日雇い労働者の街」から「高齢者、障害者の街」へと大きく変わってきた。
問題が発生した市町村において受け止める機能がなく、寿地区に流されてくるので、寿町は「生活困窮者の最後の避難場所」であり、寿町の人々は「社会的に排除された無縁に生きる人々」といえる。
寿町が当面する課題は大きく言って5つ。
①単身独居高齢者問題。要介護状態の人が多く、300メートル四方の狭い地域に30を超す介護事業者がいる。
②野宿者問題。最近はネットカフェで過ごす「ホームレス予備軍」も多い。
③依存症問題。ジョン・ミニー神父のアルコール依存症回復プログラムで、かなりの人が回復したが、まだまだ多い。
④障がい者や女性の問題。身体、精神、発達の障がいをもつ人も多い。女性もいろんな問題を抱えている。
⑤住宅の貧困問題。3畳一間の、日当たりも悪い、 風通しもよくない、およそ人間的とはいえない状態。
今は、資本があるドヤは建て直し、エレベーターを付け、部屋も少し広くし介護ベッドも置けるようにして、少しは過ごしやすくなった。資本がないところは売られてマンションに(今、7棟のマンションが建設中。10月には今までの住民とは違った新しい人たちが入ってくる)。
寿町の概要
令和5年寿福祉プラザ業務概要から
簡易宿泊者数 5340人
(うち女性) 291人
簡易宿泊所数 113軒
部屋数 8036室
生保受給者数 4981人
高齢化率 52.8%
障がい者数 243人
誇りある「人情長屋」をつくる
そんな中、「寿地区のこれからと協働の展望」に関する会(2021年3月)を開き、「寿歴史研究会」(加藤彰彦代表)をスタートさせた私たちは、南山荘(鉄筋コンクリート5階建てのドヤ)のオーナーと出会った。オーナーは建物をリフォームしようとしたが、どこの銀行も融資してくれなかった。
そこで、国交省の助成金制度(17年施行の住宅セーフティーネット法)を活用し、寿町が抱えている人たちの課題の解決の場所として大改造したらどうかと、この1年ほど取り組んできた。
我々のミッションは、1人ぼっちで生活手段もなく生きている人たちの抱える問題を解決する場所として南山荘を整備する、というものだ。孤立している人たちの縁を結び、誇り、居場所、活躍の場所がある、いわば「人情長屋」をつくる。
ワンフロア260平方メートルで、1階は生活サポート、2階は健康サポート、3〜5階はシェアハウス。横浜市のセーフティーネット住宅の家賃補助を活用して運営する構想。国交省の助成金を申請しており、6月中旬に結果が出る。採択されたら詳細を詰め、9月頃着工、来年4月頃完成、事業開始と見通している。
センター事業団は共同事業者になっていただいており、施設の運営体制、収支見通しなどを含めて話し合いをしていくことになる。
センター事業団は清掃講座を開き、ドヤの清掃の仕事で生活保護から抜ける人を生み出している。画期的だと思う。南山荘での就労支援は清掃の仕事とともに、農福連携の仕事をつくっていく。農業だと生産から加工、販売までいろんな仕事がつくれる。林業、漁業も含める。
神奈川県の中には200以上の農福連携推進事業所がある。これらをつなぎ、「かながわ農福連携推進協会」を11月頃に設立したい。
また、横浜市内にある約12万の空き家を借り上げ、そこに住む展開もできないかと思っている。