ワーカーズコープ連合会 代表者会議 IYC2025見据え、下期方針を議論・共有 協同労働を社会変革の原動力に

本紙 炭谷

 日本労働者協同組合連合会(ワーカーズコープ連合会)は、「加盟組織代表者会議」を11月2日、東京・池袋本部とオンラインで開催。15組織から会場参加52人、オンラインで38アクセスがありました。24年度上半期の取り組みを振り返り、来年の国際協同組合年(IYC2025)を見据えた下半期の方針を議論・共有しました。(本紙 炭谷)


会場には52人が参加。田嶋専務理事が基調提起。

加盟組織15団体が参加

新たな労協法人設立の大きな支えに

 冒頭、労働者協同組合法の制定に尽力し、10月に亡くなった元労協連(現ワーカーズコープ連合会)副理事長の島村博さんに黙祷を捧げ、古村伸宏理事長が開会あいさつ(別項)。

 田嶋康利専務理事が2024年度上期の活動報告と下期の活動方針を提起。

 活動報告では、「労協法の施行後、全国で100を超える労働者協同組合が生まれているが、私たちの実践が大きな支えになったことを確認し喜び合いたい。また、こうした団体の連合会加入も広がりつつある(正会員19、準会員26)」と強調し、加盟組織の交流・研修、他の協同組合や労働者福祉協議会との連携、国際活動の状況を説明。

 下期の方針として、①会員組織の交流推進、②労働者協同組合の周知、設立を促進する協同労働推進ネットワーク、連合会加盟組織の拡大、③全国協同集会の開催準備、④気候・環境、小農活動の推進、⑤自治体への協同労働、労協法活用の政策化行動などを挙げ、「雇用労働が当たり前の社会で、当事者意識を持って働く協同労働は、社会を変える原動力になるのではないか。困難な時代にあっても、働くことで生きがいや喜びを感じられる組織と関係性を築いていこう」と力を込めました。

「人材確保」「事業開発」「周知」で分科会も

 ワーカーズコープ・センター事業団労協法業務室の岡本章寛副室長が、厚生労働省の周知広報事業や、今年度から全国5県(神奈川、長野、福井、三重、徳島)で始まった、労働者協同組合活用促進モデル事業の進捗状況を報告し、「私たちも各地の協同労働推進ネットワークや協同組合、市民団体などと連携しながら、地域で労協を広げていこう」と話しました。

 加盟組織の活動状況について11団体(労協うえだ、かりまた共働組合、TNG労協、ワーカーズコープちば、ワーカーズコープながの、はんしんワーカーズコープ、ワーカーズコープ・センター事業団、ワーカーズコープ山口、地域協同組合無茶々園、ケアワーカーズコープわたすげ、社会福祉法人越前自立支援協会)が報告。

 3つのテーマ(「人材確保と育成」「新たな事業開発」「ネットワークづくり・労働者協同組合の周知・普及」)で分科会が開かれました。

分科会でそれぞれの団体と取り組みや課題を共有し合い、交流を深めた


 菊地謙副理事長(ワーカーズコープちば代表理事)が、「労協法も徐々に知られるようになり、労協で地域課題を解決したいという人たちが増えてきた。連合会の役割は重要だ。こうした人たちと一緒に地域づくりに踏み出そう」とまとめました。

「働く」の中に楽しさ面白さ見出そう

古村理事長開会あいさつ

古村理事長

 

 労働者協同組合法の施行から3年目に入り、これまでに100以上の労協法人が設立された。しかし、新たに立ち上がった多くの団体にとって、事業の拡大や協同労働の定着はこれからの課題だ。

 労働者協同組合の社会的な普及状況を1日に例えると、まだ「日の出前」にあり、社会に本格的に登場するのはこれからだ。

 社会全体や世界を見渡すと、ウクライナやパレスチナ・ガザ地区の戦争は一層深刻さを増し、SDGsで掲げられた気候環境の回復に向けた取り組みも厳しい。

 社会や世界の危機を語り尽くすことはできないが、その背景に何があるのか、自分自身のあり方をどう問い直すのかが求められている。

 他人や社会のせいにして終わるのではなく、この社会を構成する一員としての意識を持つことから、変革を始めなければならない。

 また、労協法が社会にどういう変化をもたらしていくのか。労働者協同組合を広げる活動は大切だが、同時に、協同労働の理念や思想をどう浸透させていくのか。

 それには、協同労働を実践する私たち自身が「働く」という営みの中に楽しさや面白さを見出しながら、さまざまな人たちとのつながり方を編み出していくことが求められている。

 冒頭、今の状況を「日の出前」にたとえたが、日の出を待ちわびつつも、その瞬間を心から晴れやかな気持ちで迎えるために、今できる努力を惜しまずに、みんなでその過程を楽しみながら、分かち合いながら進んでいきたい。そして、あらゆる地域で、希望が生まれる場をたくさん創り出していこう。

WC連合会代表者会議 加盟組織の発言から

3期目に突入。次につなぐ組織固めへ

労協うえだ 北澤隆雄代表理



 2023年3月に設立し、すぐに連合会に加盟。全国や上田市内の労協と連携ができたことで、ここまでやってくることができた。

 今年度の活動方針は3つ。一つ目は、地域包括支援センターとの連携を強化し、地域の困りごと解決の仕組みづくりをさらに推進すること。

 前期は40件の仕事を受注したが、市内10カ所の包括センター単位で各5人程度の地域支部をつくり、組合員50人の組織を展望する。

 2つ目は、荒廃した遊休農地の対策事業。地元農協や環境団体、 有志などと来年2月に「遊休農地の再生とソルガム栽培の普及に取り組む連絡協議会」を立ち上げることに。上田市長とも懇談し、市の参加も内諾を得ており、生協や医療生協などの協同組合の仲間にも参加を呼びかけ、設立を推進していく。

 3つ目は、自治体や地域の自治会からの委託業務の拡大。

 3期目に入り、真価が問われる年。次の世代にバトンを渡せるよう、組織をしっかり固めたい。

国交省の「空き家対策モデル事業」も

かりまた共働組合 国仲千明理事



 沖縄県宮古島の狩俣地区で、自治会を母体に生まれた労協。

 私たちの組織でも人材不足は大きな悩み。今計画している、空き家対策や土づくり、スーパーフードのモリンガ栽培などの専門スキルが伴う事業分野では、新たな人材確保が必要。地域の潜在的な人材を発掘して就労に結びつけたい。

 国土交通省の助成金を活用した「空き家対策モデル事業」も行っている。

 これまでに、航空会社と連携した地域体験プログラムや台湾からの視察研修の実施、空き家サミットの開催、台湾・長榮大学サマーキャンプ受け入れなどを行ってきたが、今後はさらに、DIY体験ツアー、建築・設計関連の大学と連携した空き家のリノベーション、モリンガとかつおぶしを使った、ふりかけの商品化を進めていく予定。

 昨年度より行っているメタバース(仮想空間)内での協同労働、労働者協同組合の周知・広報にも取り組んでいく。今年度は加盟組織との人事交流を実施したが、連合会のスケールメリットを活かしながら、さらにみなさんと交流していきたい。

3団体で困難抱える若年女性の支援開始

ワーカーズコープちば 菊地謙代表理事



 WCちばは37年前に設立。病院清掃や生協の物流などの仕事から始まり、高齢者施設の食堂や団地の部屋の片付けなどの自前の仕事や、訪問介護、放課後等デイサービスなどと事業を広げてきた。組合員は約220人で事業高は5・5億円。

 以前は行政からの委託事業はなかったが、ここ10年は生活困窮者支援の仕事が広がり、今では相談やシェルターなどの事業が全体の3分の1を占めるように。10月からは、県の委託で困難を抱える若年女性の居場所事業を 3団体のコンソーシアムで受託し、私たちは、「Tamro」(タムロ)という居場所の運営を開始。

 生活困窮者支援の事業が増える中で、千葉県初のフードバンク「フードバンクちば」を立ち上げ、子ども食堂、制服バンク、シェルター、高校生の居場所事業なども行っている。

 就労の場づくりを出発点に、着るもの(衣)、 食べ物(食)、住まい(住)に取り組みながら、地域づくりを進めている。

再び経営危機にならぬよう事業の拡大にも

ワーカーズコープながの 高橋圭子専務理事

 昨年度、経営危機を脱却したが再び危機に陥らないためにも、グループホームの設立や学習支援の拡大を始め、現在受託している、サポステや温泉施設、児童館などを落とさずに更新しようとプロポーザルの準備を進めている。

 長野には就労継続支援B型事業で清掃業務を行う事業所が大変多いが、品質への苦情も耳にするので、清掃技術を指導する事業や一般就労で清掃に取り組みたいという障害のある若者を受け入れていくことも検討中。

 WCながのは、長野県の子ども自殺対策チームのコアメンバーにもなっており、今後はケアリーバー支援にも取り組んでいきたい。

 人材確保は大きな課題。今年度から人材育成PJを立ち上げ、それぞれの事業本部でも人材確保に取り組んでいるが、長野中央病院現場では若いリーダーの決断で清掃ロボットを導入することに。

 信州協同労働推進ネットワークと一緒にネットワークの拡大や、労働者協同組合の周知、設立促進にも取り組んでいく。

新設市営住宅の自治会づくりに協力

はんしんワーカーズコープ 馬場義竜代表理事



 2022年度から、実施している高齢者生きがい就労事業(3年間のモデル事業)では、当初20人ぐらいだった利用者が現在は80人に増加。昨年4月にはまちづくり仕事おこし講座を開き、毎月1回ミーティングを重ね、10月に支え合い団体が立ち上がった。

 尼崎では、3つの市営住宅を、新たに建設する市営住宅に統合する計画が進行中。この計画に関わるコンサル会社の要請を受け、行政やNPO、地域団体と共に地域・自治会づくりにも取り組んでいる。住⺠の自治や交流を進める上で、協同組合的運営や就労的活動が期待されており、生きがい就労の経験も活かせると思う。

 事業開発では、ハウスクリーニングや遺品整理などが少しずつ増加。また、張り替えをせずに壁紙を染色する『染色施工』の代理店契約を結んだ。日本の壁紙の年間出荷量は約6億㎡(18万トン)で、そのうち6万トンが廃棄されているそうだ。 環境にやさしいこの事業を展開していきたい。

人材戦略で基金創設 多様な取り組み進む

ワーカーズコープ・センター事業団 小林勲専務理事

 

 昨年度は新宿の学童クラブに端を発する不適正報告事案によって、事業と働く仲間を大きく失った。二度と同様事態を起こさない決意のもと、組織の抜本的改革、よい仕事・協同労働の再確立、そして経営改革に向き合う1年と今年度を位置付けている。

 担い手不足によって訪問介護事業者の倒産が過去最高になっているが、センター事業団でもこの問題は深刻。人財戦略として1億円の基金を創設し、全国の事業本部ではホームページの刷新やパンフの作成を始め、北東北では理学療法士を1人配置し、介護現場で休む職員が出た時のバックアップ体制を構築。

 山陰山陽と四国、九州・沖縄は、合同でDXの推進や人材発掘、情報発信プロジェクトに取り組んでいる。他にも全国で多様な取り組みが始まっており、これらの取り組みを集約し、今後の方針に活かしていく。

「あなたみたいに生きたい」と思われる仕事を

社会福祉法人越前自立支援協会 社会的養育総合支援センター一陽 橋本達昌統括所長

 福井県越前市で児童養護施設を運営。30年前、廃止の危機に直面した施設を、働く仲間が団結して市民から1千万円を集め、存続させたのがはじまり。

 私は職員をうまく育てられない組織が、子どもをうまく育てられるはずがないと確信している。施設の良し悪しは退職率を見ればわかる。職員が辞めない、職員が成長できる運営をしている施設は、子どもたちも満足しながら成長しているのではないか。

 一陽の人財マネジメントの一部を紹介すると、現場職員の合議による職員採用、1人年額10万円の職員研修費の予算化、組織の経営状況や運営課題、全職員の労働条件の公開など、さまざま工夫を凝らしている。

 さらに、施設運営には税金も入っているので、子どもたちのプライバシーをしっかり守った上で、いろんな人に見てもらい、市民にもお金の使い方に納得してもらうことがすごく大事だ。

 福祉労働は自分自身が1つのリソース。子どもの前にいる私が、明るく楽しく笑い、いつものびのびと仕事をしてる。「なんでいつもそんな笑顔でいられるの? 私もそう生きたい」と思ってもらえることが、子どもたちにとって、一番のケアワークではないか。