韓国・ウジン交通 路線バス運行の労協 日本のワーカーズに学ぼうと 埼玉、佐賀の現場視察

ワーカーズコープ連合会海外連携推進部 友岡有希

 韓国忠清北道清州(チョンジュ)市で路線バスを運行する労働者協同組合「ウジン交通」の皆さんが、日本の労働者協同組合の取り組みを学ぶため、5月に2組に分かれ来日。1回目は埼玉県深谷市、2回目は佐賀県神埼(かんざき)市にある労協ワーカーズコープ・センター事業団の現場を視察しました。(ワーカーズコープ連合会海外連携推進部 友岡有希)

ロゴには「協同組合型労働者自主管理企業」の表記も

深谷を見て「すべての人のためにできること考えたい」

労働争議経て労協に。出資は一口50万

 ウジン交通は、賃金未払いから始まった労働争議を経て、2005年に再出発した労働者協同組合(労働者自主管理企業)。現在の組合員は約380人で130台ほどのバスを保有しています。

 法人格は株式会社ですが、働く人たちが株主となり、出資(一口50万円)し、役職に関わらず対等な立場で経営に参加する労働者協同組合として運営。

 労協法人への移行も検討しましたが、手続きや費用の負担が大きいため、会社法人を維持しつつ、新たに社会的協同組合を設立し、地域に根ざした組織づくりを進めようと展望しています。

 今回の視察は、韓国労働者協同組合連合会を通じて交流がある「日本のワーカーズコープを視察し、新組織の設立・運営に活かしたい」との希望が寄せられたことから実現。社内に設置された「組織未来委員会」から、1回目は組織運営担当チームの11人(社会的協同組合の発起人)、2回目は地域未来活動チームの12人が来日しました。

「大きい組織で理念の共有どうやって」

 組織運営担当チームは、5月12〜14日に来日。初日は東京・池袋のワーカーズコープ連合会本部で加盟組織と交流しました。

 キム・テギョンさんが、ウジン交通の歴史や、労働者協同組合として運営してきた工夫と社会的協同組合設立への展望を説明し、互いの組織運営や制度移行の経験を共有。さらに日本の労協法や組合員の合意形成、費用・税制などについて意見交換しました。

 同席していた日本社会連帯機構会員の日本輸送サービス労働組合連合会(JTSU)の関昭生執行委員長の話を聞いたウジン交通の方は、「労働運動からスタートした私たちの歴史と重なる話が多く、労働者の権利を守り、働くことを地域につなぐ活動に共感した」と話していました。

 13日は深谷市で深谷とうふ工房、「はじめの一歩」(就労継続支援B型)、だんらん上柴(訪問・通所・居宅介護支援など)、「ふぁみりあ」(児童の安全確認活動)を視察しました。

 「はじめの一歩」では、障がいのある人の特性に応じた働き方の工夫に関心が集まり、とうふ工房では在来種の大豆栽培や畑を見学。各事業の連携と地域とのつながりから、仕事づくりや協同の広がりを学びました。

 設立から20年が経過したウジン交通では、企業理念の継承が課題となっており、「規模の大きいセンター事業団では、どのように理念を共有しているのか」との質問があり、成田誠本部長と小川勇気事務局長から、事務局員制度や団会議、組合員研修などの取り組みが紹介されました。

 参加者からは、「地域に目を向け、自分たちの仕事や活動の展開を考えるようになった」「組合員だけでなく、事業に関わるすべての人のために何ができるかを考えたい」といった感想がありました。

「組織運営担当チーム」の皆さんと、センター・埼玉事業本部、深谷エリアの組合員。だんらん上柴にて

参加者「夢ねっこのような場所があれば…」

労組は組織運営支援する立場で

 地域未来活動チームは、5月19〜21日にかけてセンター事業団の組合員と交流・現場視察を行いました。

 19日、福岡市・九州事業本部で行った交流会には、労働組合の自交総連から生まれたワーカーズコープタクシー福岡の前理事長・緒方満さんも参加。

 緒方さんは、「労働組合が協同組合の運営と、どう折り合いをつけているのか」と質問。

 ウジン交通のチ・ヒグさんは「労働組合は組織運営を支援する立場で活動している」と説明。経営協議会に参加し、労働条件や経営に関する意見を集約して話し合いの場を作るほか、福利厚生の運営などを通じて、よりよい職場環境づくりに協力しているとのことでした。

 20日は、佐賀地域福祉事業所「夢ねっこ」(就B、放課後等デイサービスなど)を訪問。

 前所長の川岸順子さんが、立ち上げの経緯や、地域とのつながりを模索しながら始めたみんなのおうち「ほわ〜っと」、配食事業、地域サロンについて紹介。地域の60〜70代の方々が弁当づくりに携わっていることに、参加者からは驚きの声が上がりました。

夢ねっこでは、就B利用者による手作りの鯉のぼりの記念品をもらった

 また、就労継続支援B型の利用者からは手作りの記念品が贈られ、所長の鶴利邦さんが歓迎の気持ちを込めて、オカリナで「アリラン」などを数曲演奏しました。

 一行が去った後、部屋に残されていた一通のメモを川岸さんが見つけました。そこにはこんな言葉が綴られていました。

 「私には問題を抱えた弟がおり、家族みんなで苦しい時期を過ごしたことがあります。そのとき、夢ねっこのような場所が近くにあったら、どれほど救われたことでしょう。皆さんの温かさに敬意を表し、“小さな巨人”とお呼びしたいです。皆さんの想いが末永く受け継がれることを願っています ―キム・ドゥヒョン」

九州事業本部で「地域未来活動チーム」の皆さんと

韓国でも新たなビジネスモデルとして注目

 ウジン交通は5月末に総会を開き、社会的協同組合を設立。まずは、早朝から働く組合員や地域の労働者が利用できる食堂の運営を計画しています。

 ウジン交通の運営形態は韓国でも珍しく、非正規化が進むバス業界において、新たなビジネスモデルとして注目を集めています。

 一行は他にも、北九州市のNPO法人抱樸を訪問。韓国清州市での再会を約束し、日本での日程を締めくくりました。