長野 労協うえだ 地域包括と連携  高齢者の困りごとを仕事に 庭木の伐採、草取り、見守り、エアコン修理

本紙 本田真智子

 経験豊かな高齢者がいきいきと働ける場をつくろうと2023年3月に立ち上がった長野県上田市の労働者協同組合上田(労協うえだ、組合員23人)は、農業、営繕などの事業と共に、市内10カ所の地域包括支援センター(地域包括)との連携を進めて、高齢者の困りごとを「生活支援」として仕事にしています。取り組みを紹介します。(本紙 本田真智子)

82件の依頼、ニチイのケアマネからも

 労協うえだが行った「困りごとの仕事」は、一昨年7月から今年6月末までで延べ82件、187万円になっています。庭の草取り、庭木の剪定(せんてい)、伐採、片付けなどが57%、エアコン、電気まわりが18%で、畑の草取り、雪かきなども。

地域の困りごとを仕事に。高齢者宅の庭木の伐採をする。
エアコンの掃除

 困りごとの相談紹介は、城下地域包括からが42%、川西地域包括23%で、他の4カ所の地域包括からもあります。また、ニチイなど高齢者施設のケアマネジャーからの相談も5件ありました。

 この間の仕事の実績をもとに、4月に「地域の困りごと解決の仕組みと価格表のチラシ」を作成。そこには、部屋の定期的な清掃、障子や網戸の張り替え、防犯カメラの設置、話し相手、畑の耕運などの相談例と、労協うえだの基本姿勢と考え方も掲載しています。

 価格は、1人1時間あたり1300、1500、1750円で、これに作業人数をかけます。仕事の内容によっては見積りや相談によるとしています。

これまでの実績をもとに作成した価格表。労協うえだの基本姿勢と考え方も掲載

自分亡き後の妻が困ったらと「相談」契約

 あるケアマネからはこんな相談も。ひとり暮らしで認知症の女性が庭木の管理ができず、繁茂した枝が隣家や道路にかかり、苦情が。とうとう隣家から40万円の庭木の伐採の見積りを渡され、「これでいいなら、うちで依頼する」と迫られた……。

 離れて暮らす子どもたちと話して、労協うえだで伐採。17万円で済み、大変喜ばれたそうです。

 また、がんで治療中の夫から、自分が亡くなった後、「妻が困ったことがあったら労協うえだが相談に乗り、対応する」として、年額2000円で契約しました。

 「活動を通じて、高齢化社会の実態を目の当たりにした。安心して暮らせる地域社会の実現が切実な課題だ」と代表理事の北澤隆雄さんは話しています。

ワーカーズ上田地域応援隊経て設立

 21年、北澤さんたちは、労協ワーカーズコープ・センター事業団北陸信越事業本部を訪問したことをきっかけに、「ワーカーズ上田地域応援隊」を発足。農業や営繕の仕事をし、「事業性を持ってやっていける」と自信をつけたところで、労協うえだを設立しました。

 県の支援金を活用しての農地再生とソルガム栽培・加工、放置竹林の伐採と竹炭づくりなどにも、さまざまな団体と一緒に取り組んでいます。

耕作放棄地で農園活動も

地域包括のある10エリアで支部設立へ

 地域包括との連携は、22年11月に城下と川西の地域包括が開いた勉強会「つながりと健幸づくり住民パートナー養成講座」(全3回)に北澤さんが参加したことから。

 北澤さんが上田地域応援隊を立ち上げて、さまざまな地域活動や仕事づくりをしていることを話すと、川西地域包括所長の蒲生俊宣さんが「面白そうだね」と声をかけてきました。蒲生(がもう)さんは「地域でサロン活動をしても、男性は参加しない」という悩みを持っていました。

 一方、北澤さんたちは労協を立ち上げましたが、営繕などの仕事の営業がなかなか大変と実感。地域包括に持ち込まれる高齢者の困りごとを受けられないかと考えるようになりました。

 蒲生さんに誘われて、23年7月の「上田市生活支援コーディネーター連絡会」に参加すると、地域包括には高齢者のいろいろな悩みや困りごとが持ち込まれるものの、市の委託の範囲しかできず、草を取ってほしいとか、電球が替えられないとかの個別の要望には応えられないことを知りました。

 蒲生さんも「労協うえだのような活動なら、高齢の男性も参加しやすいし、仕事を通じて地域貢献をしながら介護予防にもなる」と期待、北澤さん以上に労協うえだの取り組みを語ってくれるようになりました。

 地域包括のある10のエリアに、それぞれ5人以上の組合員で支部をつくり、地域包括との連携を強化しており、3月に川西地区で支部が発足、真田地区と城下・潮田地区でも発足予定です。

夏の太陽にも負けず思いを語り合う北澤さん(右)と蒲生さん

地域包括と連携し信用創出を
必要性高い移動支援を互助の仕組みで

 労協うえだは、市内の地域包括支援センター(地域包括)との連携を進めています。「上田市生活支援コーディネーター連絡会」が7月29日に神川公民館で開かれ地域包括のスタッフや市の担当者と、労協うえだの組合員5人も参加しました。

 労協うえだ代表理事の北澤隆雄さんがこの間の地域包括と連携した取り組みと課題などを報告し、川西地域包括所長の蒲生俊宣さんも補足しました。

 組合員の土屋博資さんが、自分の暮らす川西地域で進めている「地域応援隊かわにし」について説明。

 土屋さんは昨年7月に川西地域包括が主催した「地域連携会議」に参加し、労協うえだの話を北澤さんと組合員の高橋明彦さんに聞き仲間に。

 「その会議で関心を持った人たちと、労協うえだ川西支部を立ち上げた。高齢者のニーズが高い移動支援を始めようと地域応援隊かわにしの準備を進めてきた」と土屋さんは経緯を紹介。

 地域応援隊かわにしは、会員制の互助組織で、自分ができないことを支援してもらい、できることを支援するというもの。会費は年間1000円で、利用は1時間1000円。生活支援と移動・外出支援が大きな柱です。

 移動支援は、希望者を目的地に運ぶだけではなく、目的地でも寄り添いサポートをし、その料金をもらうという考え方です。

 ただ「互助の考えを理解してもらうのがなかなか難しい」と土屋さん。6月の地域連携会議で説明し、関心を持った人を訪ね詳しく話しましたが、「面倒だ」「目的地まで連れて行ってもらえればいい」と言う人も。

 蒲生さんは「担い手にも、助けてもらう側にもなるという、支え合いの考え方を理解してもらうところで苦戦している。実績を積み重ねて、口コミで取り組みが広がれば、自治会からも協力が得られるようになる」と。

 土屋さんも「困りごとを解決するためにも、粘り強くやっていく」と続けました。

 「地域応援隊かわにし」がうまくいけば、他の地域にも広げる予定です。

 北澤さんは、「地域応援隊は、事業性はまだ低いが必要な取り組みをする任意団体。地域包括との連携や地域応援隊の取り組みは、地域での信用を創出するためのもの。労協うえだを知ってもらい、地域を支える担い手として信用してもらい、地域全体で仕事や仲間づくりをしていこうという狙いもあるんだよ」と話しています。

連絡会に参加した地域包括、市担当者の皆さんと。後列右から北澤さん、土屋さん、高橋さん。2人置いて蒲生さん。前列右から2人目の河﨑まり子さんと左隣の堀内けい子さんはソルガム栽培や加工に関心があると労協うえだの仲間に
連絡会の後、労協うえだの事務所を見学する地域包括の2人。背中は説明する北澤さん