東京・豊島 厚労省伊原事務次官 労協の現場を視察 「どこか人間的、そこが最大の価値」 「とても頼もしく面白さ感じる働き方」

本紙 炭谷

 厚生労働省の伊原和人事務次官と雇用環境・均等局勤労者生活課労働者協同組合業務室の池田陽平室長らは、9月3日、労協ワーカーズコープ・センター事業団東京中央事業本部豊島エリアの、「地域共生型就労拠点こみっとプレイス(就労継続支援B型事業など)」、豊島区立東池袋フレイル対策センター「いーとこ(としま宙(そら)事業所が豊島区から運営受託)」の2現場を視察。ワーカーズコープ連合会から古村伸宏理事長、竹森鉄専務理事、中野理専務理事補佐が同行しました。(本紙 炭谷)

こみっとプレイスの前で労協業務室の皆さんと。右から4人目が伊原事務次官。左から3人目が7月に着任した池田室長

就B事業所 こみっとプレイス

運営に利用者も参加 経営も改善

「自分たちでやることを決められるのがいい」

 「こみっとプレイス」では、前所長の神戸川歩事務局長と島野公伸所長が、地域若者サポートステーションの元利用者たちが7年前に開所し、現在もスタッフとして働いていることなど立ち上げの経緯と現状を紹介。

 特に神戸川さんは開所以来の課題だった経営は、利用者の力を取り入れて改善したと振り返り、「メンバーさん(利用者)に声をかけ、会議にも参加してもらい、メンバーさんのやりたいことを形にしていった。すると、ここで過ごすことが楽しくなり、利用回数や見学に来た人の申し込みが増えた。以前利用していた人は、『ここでは自分たちでやることを決められるのがいい』と話していた」と語りました。

当事者意識とモチベーション育む仕組み

 伊原次官から労働者協同組合で運営する意義を問われると、「利用者はサービスを受けるお客様ではなく、一緒にこの事業に関わる仲間。別の事業所で生活介護事業を行っており、重度障害のある方も月例会に参加することがあるが、言葉でのやり取りが難しい方でも、長く関わる利用者が『この人はこれが好きだから』と代わって提案してくれる。こうした関わりが生まれるのも協同の力だと思う」と神戸川さん。

 島野さんも、「職員や利用者が対等に意見を出し合う。ぶつかり合うこともあるが、その過程で互いの得意分野を活かし、柔軟に協力し合える点が他の職場との大きな違いでは」と実感を。 

 伊原次官は、「労働者協同組合は運営で大変な面もあるが、同時に当事者意識やモチベーションを育む非常に魅力的な仕組み。この組織にはどこか人間的なところもあり、そこが最大の価値だと思う」と感想を述べました。

伊原事務次官

介護予防施設 フレイル対策センター

常に社会連帯意識 地域の力活かしながら

 東池袋フレイル対策センターでは、としま宙事業所の荒井麻記子所長と高田亜希子センター長が対応。豊島区からも福祉部高齢者福祉課の今井有里課長と同介護予防・認知症対策グループ民井由希係長が同席しました。

 東池袋フレイル対策センターは、フレイル(虚弱)予防を目的とした多機能型の介護予防施設です。

 豊島区公認の介護予防体操(としまる体操)やさまざまなサロン活動などの他に、地域の高齢者が食事を通じて会話や交流を楽しむ「おとな食堂」を週1回開いています。

区の複合施設の1階にあるフレイル対策センター(豊島区HPより)
フレイル対策センターで。前列左から高田センター長、伊原事務次官、荒井所長、神戸川事務局長。座っているのは、高齢者の外出・移動を支援する「としまベンチプロジェクト」の一環として、西武デパート池袋本店から寄付された椅子
「としまる体操」も体験

 

「労働者協同組合だからできる」

 一行は、ちょうど開かれていた「あじさいサロン(体操、脳トレ、レクリエーションなどの介護予防活動)」や施設を見学し、併設の「い~とこカフェ(こみっとプレイスが運営)」で懇談しました。

 荒井さんが、センターの利用者について「一人で来館し、名前も知らない人たちがおしゃべりをしているうちに仲良くなって芝居を見に行ったり、食事をしに行ったりと、来館者同士で友だちの輪を広げている。一番年齢が高い方は97歳。毎朝地域のラジオ体操と公園清掃をこなし、ここでとしまる体操(豊島区オリジナルの介護予防体操)を午前と午後2回やっている。彼女の元気な姿が、みんなの目標になっている」と述べました。

 第2層生活支援コーディネーターでもある荒井さんは、区内西部地域での取り組みも紹介。

 「大学生を講師にスマホ教室を開いたり、小学校の農園で認知症の人やその家族の小農活動をしたりと、常に社会連帯経営を意識しながら地域の力を活かして活動している。また、区民ひろばや地域包括支援センターの職員、ボランティアコーディネーター、民生委員、サロンの代表者たちと、『豊島つながる登山の会』を立ち上げ、近郊の山を登りながら地域の情報を共有している」

 伊原次官から多様な実践の秘訣を尋ねられると、「労働者協同組合という組織が、自分たちで出資し、運営や働き方を決めながら活動しているからでは。私自身、10年以上ワーカーズコープで働き、さまざまな仕事を経験する中で、地域を巻き込みながら活動することが自然に身についてきた。協同労働が広がっていけば、誰一人取り残さない、暮らしやすい社会につながると思う」。

 高田さんも「おとな食堂でも、参加者の方々と実行委員会をつくって、メニューや調理方法、衛生管理に至るまで意見を出し合いながら運営している。時間がかかることもあるが、失敗しても、振り返りをしながら『次は何をつくる?』と一緒に楽しく活動している」と補足しました。

利用者と働く人が同じ目線で、印象に

 伊原次官は視察を終えて「障害がある人の支援や高齢者のフレイル予防といった事業で、利用者と働く人が同じ目線で関わり合う姿や、働く人が受け身にならずに、自分たちで事業をどう進めていくのかを考え、積極的に関わっている様子が印象に残った。長年、雇用労働の世界で働いてきた私にとって、皆さんの働き方はとても頼もしく、面白さを感じた」と感想を述べました。

 労働者協同組合業務室の視察と合わせて行われ、同室の小櫃(おびつ)宏平指導係長、企画係職員の上原宏斗さんも参加しました。