さんいん若サポネットが「シンポジウム」 逆境経験者にはポジティブ経験を
労協ワーカーズコープ・センター事業団関西事業本部と山陰山陽事業本部が運営し、兵庫県北部(但馬(たじま)地方)、鳥取県、島根県で児童養護施設や里親家庭など社会的養護の下で育った当事者(ケアリーバー)などへの支援活動を行っている「さんいん若者サポートネットワーク」は、活動報告を兼ねた「シンポジウム」(つながる山陰 広がる若者の可能性)を、9月23日に島根県松江市のいきいきプラザ島根で開催。会場とオンラインを併せ45人が参加しました。(山陰山陽事業本部事務局次長 株本俊夫)
顔も知らない自分を応援する人がいるなんて
同ネットワークの活動報告では、市民や団体、企業の寄付が原資の「さんいんこども・若者おうえん助成」について、「地元での就職を見据えた自動車運転免許の取得支援」や「職業訓練校での学習・生活支援」「体験格差の解消に向けたファミリーホームでの体験活動プログラム」「ケアリーバーの第3の居場所づくりと独り立ち支援、独り立ち後の支援」などに、クラウドファンディングや寄付で集めたお金を助成したと紹介。
助成先の4団体も報告。「ファミリーホームいとう」からは、子どもの学びを保障するため、ホームで暮らす若者が背負っている多額の授業料や、心理士になることを夢見る子どもを応援するための費用に補填したと報告。「自分で選択する機会を提供した」と意義を述べました。
支援を受けた側として、「世の中には、(顔も知らない)自分のことを支援してくれる人がいるんだ」と話していたという当事者の声も伝えられました。
当事者がたくさんの依存先もてる支援が課題
「基調講演」は、一般社団法人Universal Company代表理事の多母髪大気(たぼがみだいき)さんが「逆境を力に変えて」とのテーマで。低出生体重児として生まれ、先天性脳性麻痺と診断を受けて幼少期から児童施設で過ごしてきた多母髪さんは、「家族の援助を前提につくられている今の障害者支援制度は“社会的養護”の観点が抜け落ちている」と指摘。「多くの逆境的体験をしてきた社会的養護の下にある若者たちには、たくさんのポジティブ体験が必要」と当事者の視点で訴えました。
その後の「座談会」では、多母髪さんに加え、島根大学法文学部教授の宮本恭子さんや社会的養護自立支援拠点事業所「米子みそのらいと」の支援コーディネーター、高本司さん、ワーカーズコープ連合会理事長、古村伸宏さんが登壇。それぞれ、若者支援の課題などについて考えを述べ、「申請主義・家族主義の日本の福祉制度は、制度の狭間を補完する役割として家族への期待が大き過ぎる」と問題意識を共有。「イギリスには『ケアリーバー法』があり、個々の当事者に寄り添う伴走支援者の必要性が位置付けられている」と紹介される場面もありました。

また、日本でも人生という単位で助け合える支援者や同じ境遇にある人が集まれる場所をたくさんつくることの必要性などが語られ、当事者が依存先をたくさんもてるような支援のあり方が課題だと感じました。
さらに、「自分たちに何ができるのか?」という視点に立った議論も交わされ、「支援は、一緒に考え、一緒に行動し、一緒に解決するスタンスで」との意見や、「ただ話を聴いたり、ただ一緒に買い物に行くだけで楽になることがある」とする声も。深いけど深くない支援の奥深さに触れたと感じた瞬間でした。
「困っても相談しない人は、相談して助けられた経験がないことが多い。話を聴きっぱなしにしないこと、分からなくても一緒に考えることで次の相談につながる」︱との話には「なるほど」と思いました。
豊岡短期大学の大西清文先生は、「フランスでは、『虐待』という言葉の代わりに『危険な状況』という言葉を使っている。虐待では、それをしている親や児童相談所への怒りが先に立ってしまう。子どもたちに目を向け、『心配だ』と気にかけ、助けようと立ち上がる市民をいかに育てていくか、子どもたちを気にかける輪をどう広げていけるかが大事だ」。

竹森鉄専務理事は、「子どもの権利として意見表明があるが、そもそも私たち大人は意見表明ができているのか? 意見表明しやすい社会をつくれているのか?」 と会場に問いかけ、参加者一人ひとりを一気に当事者に引き込みながらまとめました。

伴走支援支える地域の仕組み、仲間が必要
今回のシンポジウムを通じ、制度の狭間に置かれた人たちへの支援ができるのは『民間』でこそと実感した一方、本当に支援が必要な人ほどつながりにくい課題が浮き彫りになりました。社会的養護の下で暮らしている、暮らしたことがある人たちなど、支援が必要な子どもや若者に対する“伴走支援者”を地域で支える仕組みや仲間の必要性を改めて感じました。