ワーカーズコープ連合会 全国協同集会 2025 新しい地域づくりに向け“交わる” “自治”と“協同”基礎に据える3団体から学び

本紙 福本

 ワーカーズコープ連合会は、「ローカルなにぎわいが創るこれからの社会」と題する「全国協同集会2025」を、11月23日に一橋大学一橋講堂(東京都千代田区)とオンラインで開催し、会場97人、オンライン130アクセスの参加がありました。20回目の今回、中心テーマは『交わる』。〝自治と協同〟を基礎に据える3団体の報告をもとに、新しい地域づくりへのきっかけをつかむことが目的です。一般社団法人日本社会連帯機構、同協同総合研究所、労協ワーカーズコープ・センター事業団が協力しました。(本紙 福本)

会場

 冒頭、竹森鉄専務理事は、「コロナ禍直前の2019年に神奈川で行って以来6年ぶりの協同集会。暮らしや学び、働き、文化などを地域づくりに取り入れた活動を実践している団体の報告をもとに、協同の可能性を再発見し、協同の力を社会全体に広げていくための新たな一歩を踏み出す機会に」と、集会の趣旨説明と開会宣言を行いました。

 司会を務めたのは、若者の政治参加を促すさまざまな活動を行っている一般団法人「NO YOUTH NO JAPAN」共同代表、足立あゆみさんです。

前半セッション

 3つの団体が実践報告。センター東京三多摩山梨事業本部の扶蘓文重本部長と、同北東北事業本部の坂本典孝本部長が進行役を務めました。

活動を始めたきっかけなどを報告する前半セッションの登壇者。手前2人は進行役の扶蘓さん(奥)と坂本さん

株式会社Compath(コンパス)(北海道東川町)

教科書にない生きる上で大事なこと学ぶ

 大人のための学び舎「School for Life Compath」を運営する株式会社Compath共同代表の遠又香さんは、もう一人の代表(安井早紀さん)と2人でデンマークを旅したことが会社設立のきっかけと切り出し、「大学でも専門学校でもなく世代も地域もバラバラの人たちが集って、教科書では学べない生きていく上で大事なことを共に暮らしながら学び合う『フォルケホイスコーレ』に出会い、日本にもほしいと直感的に思った。デンマークの人たちが、『民主主義は自分たちが望む社会は自分たちでつくっていくこと』『社会を良くするには多様な価値観があった方がいい』と考えているのにも惹かれ、帰国後、東川町在住の人と意気投合して移住。会社を立ち上げ事業を始めた」と紹介しました。

 フォルケホイスコーレは、デンマークに70校ある全寮制の成人向けの学校で、日本なら人口換算で1600校くらいのイメージ。「試験も成績もなく自由が大きな特徴で、哲学や音楽、アートなどさまざまな授業を通じて自分や他者の感情を見つめたり、社会の見方を問い直したりするプログラムを用意。異なる価値観の人たちとのコミュニケーションをサポートしつつ、他の人と共にいる難しさも含め、共同生活を味わってもらっている。デモクラシーの学校、人生の学校とも呼ばれている」と遠又さん。

遠又さん


 また、「自分と」「一緒に暮らす仲間と」「社会や世界と」の3つの対話を大切にしているとし、“自己の捉え方”や“社会とつながっていく心構え”などに変化を感じている感想の多さを報告しました。

合同会社OttO(オット)(埼玉県さいたま市)

映画のこと、何も知らなかったからできた

 映画館、カフェ、シェアハウスの複合施設「OttO」を運営する合同会社OttOの代表、今井健太さんは、「大きな思想や目標があって立ち上げたのではなく、妻の祖父母が住む大宮の区画整理がきっかけ。処分を任され、駐車場にすることも考えたが、もっと意味あることをと思考を巡らせるうち、ふと『映画館』が思いついた」と、ことの始まりを紹介。

今井さん


 ただ、映画のことは何もわからず、ネットでいろいろ検索。深谷市の「深谷シネマ」にたどり着き、館長(現在は名誉館長)の竹石研二さんのプロフィール(元建設関係、区画整理、50歳のとき映画館を思い立つ)の多くが自分と重なるのに仰天。直接話を聞きに行くと、「いつかこういう人が来ると思っていた」と嬉し泣きする竹石さん。深い縁を感じたものの、金融機関が「映画館は利益を生まない」と見ていて、融資を受けられないことも知ることに。

 それでも単なる賃貸物件ではない形を考えるうち、「シェアハウスとカフェが映画館を支えるのはどうか」というアイデアが浮かび、知り合いの建築家と、施設を構想しながら図面を引いたと経緯を話しました。

 “OttO”の名は、今井さんのことを「おっとう」と呼ぶ息子さんの言葉から。イタリア語の“8”で、“八”は末広がりで縁起がいい。古代ゲルマン語では“相続財産”を意味するというので、「これはいい」と迷わず決めました。

栄町労働者協同組合(沖縄県那覇市)

沖縄でも弱まるつながりと協同性の復活めざし

 栄町共同書店(シェア型書店)を運営する栄町労働者協同組合からは、代表理事の古波藏契さんと理事の篠田恵さんが報告。

古波藏さん
篠田さん


 「栄町共同書店は2024年10月開店。徐々に広がっている業態で、全国に125店くらい。書店の棚の一区画を月4000円で貸し出し、ここを借りて本を売る利用者が『箱店主』。本の売り上げは箱店主に入り、現在、68箱“満枠”」と紹介しました。

 6人のスタッフ(組合員)は全員30代。アーティストや建築士、編集者などと副業で、出身も住んでいる場所も沖縄と東京が半々。人件費や光熱費などの支出は箱店の利用料で賄っているそうです。

 また、「かつて沖縄と言えば『ゆいまーる』(“助け合う”や“協同作業”を意味する沖縄の言葉)とも言われたが、その弱まりが課題と感じていた」と指摘。“つながり”や“協同性”の復活に向け、自分も東京で箱店主として関わっているシェア型書店を、沖縄で運営することを決めたと篠田さん。「書店というある種“公共的な空間”を 労働者協同組合として運営することで、自分たちに必要なものを自分たちでつくっていくというコンセプトを明確にできると思った」と、労協の法人格を選んだ理由を説明しました。

 進行役:労協を選択した部分をもう少し掘り下げて

 古波藏:定款の取り方次第で労協的な実践はできると思うが、なのに労協を選択したのは、それを選ぶことで普通の経済主体とは違う何かが起きているのでは? と関心を惹きつけられることが一つ。

 もう一つは、誰かが責任を持つ普通の会社はある意味“楽”。そうではなく、上司の判断を仰いで仕事をするのではなくて、「自分でやろうよ!」と仲間にも当然のこととして言えるのが労協のすごいところだと思う。魅力を感じた。

 この後、対話型ツールでオンライン参加者との質疑などを行い、前半セッションを終了。

 進行役の坂本さんが「皆さんの話を聞き、社会の新たな装置をつくっていく取り組みだと思った」とまとめ、後半セッションにつなぎました。

後半セッション

 後半は、HATO文化編集部労働者協同組合の木原進さん、労協ワーカーズコープ・センター事業団仙台地域福祉事業所けやきの杜所長、瀬戸理音(りおん)さんに、全体司会の足立あゆみさんも加えた3人で進行しました。

進行役の木原さん、足立さん、瀬戸さん(左から)


︱3団体は労協の「文化部門」。文化についての思いを

 遠又:デンマークのフォルケホイスコーレは日本でいう文科省ではなく文化庁の管轄。デンマーク政府は「デモクラシー文化を育む仕組みとしてフォルケホイスコーレを支援する。5年、10年の結果は求めない」としていて「いいな」と思う。私たちもデモクラシー文化を育もうとしており、成果を聞かれても簡単に答えは出ない。映画とかいろんな文化事業がくっつきながら、民主的な文化が育まれていくような仕組みがあってもいいと思う。

 今井:映画は経産省の管轄(教育映画に限って文科省)。遠又さんと同様に考えるが、つくるものでもないと思っている。「できた(てしまう)もの」が文化、くらいのタイムスパンで考えるべき。

 人の意識も少しずつ変わり、その集合体が社会や文化を変えていくと考えると、教育が大事。何か一つの型にはめ込むのでなく、自由に何かに触れながら人が変化していくのを補助する色んな仕掛けが、文化を築いていく上で必要ではないか。

 古波藏:期待されている答えにはならないと思うが、私は、書店や本を文化と思っていない。書店が全国でどんどんなくなっていくのを「残念だ」とか言いつつAmazonで注文している自分がいる、みたいなちょっとだらしなくて、「無気力棒立ち」のスタンスが社会にある。そのことを認めたくないし、自分がその一人であるのも嫌なら「自分たちでどうするか考えよう」︱そんな“機運をつくる”ようなことが結果的に文化と呼ばれるべきものだと思っている。

―子どもや若い世代については

 今井:息子が小学生の夏休み前に学校でもらってきたしおりに「子どもだけで映画館などに行かない」とあった。商業施設内にあるシネコンを想定したもので安全面を考えて。だが、映画館はとくに悪いわけじゃない。子どもが本物(の映画)に触れられるよう、そういう風潮を変えていきたい。

 篠田:子どもの「安全安心」確保の話は「予防」の話になりがち。書店がある栄町市場にいると、「相互扶助」や、それと表裏一体の「相互監視」機能が働いている。協同的に守り合うことを学んでおり、ルールをつくって予防することより大事に思える。

 集会のまとめでワーカーズ・コレクティブ ネットワーク ジャパン代表の藤井恵里さんが、「人と交わりながら、賑やかに人をつなぎ、希望を生み出す力が、これからの社会をつくっていくことを十分に感じた」と述べました。

会場に映し出された対話型ツール「Slido」(スライド)の画面には、3団体の話で印象に残った言葉の数々が。「対話」「民主主義」「教育」「地域にひらく」「対話のフィットネス」などの言葉が多かった