初の小農・森林ワーカーズ全国交流フォーラム(決起集会)やってよかった、勇気でた! 協同労働が担う小規模複合農業、全国展開へ第一歩
第一次産業を日本の基幹産業に
「みんなでつくって食べる田んぼ」すべての地域に
共感、感動、笑顔 「人間の本質取り戻す運動」に確信
日本労働者協同組合連合会は「小農・森林ワーカーズ全国交流フォーラム(決起集会)」を5月9日、埼玉県の北本市文化センターで開き、353人が参加しました。日本労協連と日本社会連帯機構は、労働者協同組合法成立の1カ月前、2020年11月に「小農・森林ワーカーズ全国ネットワーク」を設立。協同労働運動と小農運動を結合させ、社会を変える新しい運動にしていこうと、「どんな小さな取り組みでもいいので、すべての労協組合員が農や森林、第一次産業に関わろう」と呼びかけ、「農業講座」も各地で開催。全国約170拠点へと実践が広がる中、取り組みを交流し、協同労働が担う小規模複合農業経営モデルを確立し、全国に広めていく第一歩にと、初めてのフォーラムを「決起集会」として開いたものです。マルシェも大好評でした。(本紙 松沢)
北本市に353人、170拠点で小農
フォーラムは、労協ワーカーズコープ・センター事業団、日本社会連帯機構、さいたまフロンティア・ネットワークが共催。北本市、埼玉県労働者福祉協議会、埼玉県生活協同組合連合会が後援。
日本労協連の古村伸宏理事長が「『いのちの共鳴』を呼ぶ大きな連帯へ」と開会あいさつ。三宮幸雄北本市長、滝瀬副次元埼玉県議会議長・滝瀬塾塾長が来賓あいさつ。



内山節さん(哲学者・NPO法人森づくりフォーラム代表理事)が記念講演。
日本労協連の竹森鉄専務が「小農は単に小規模農業という意味ではない。地域に根ざし自然と共に生き、自分たちの暮らしを自分たちで支え助け合いながら生きる取り組みだ。地域を耕し、新しい社会をつくる大きな連帯を。そして『みんなでつくって、みんなで食べよう!』という運動を全国に」と基調提起。

「組合員みんな」から「地域のみんな」へと担い手が広がるワーカーズコープ山口の田んぼづくりなどが報告され、「第一次産業を日本の基幹産業に」と呼びかけるアピールを採択。労協センター事業団の成田誠埼玉事業本部長が閉会あいさつ。
2会場での懇親会も盛り上がりました。
アピール 次のことを確認し、実践へつなげていきます
本フオーラムでは、これまでの実践を確かめ合い、次のことを確認し、実践へとつなげていきます。
-. みんなでつくって、みんなで食べる田んぼづくりを、すべての地域に広めていきます。農と食をともに担うことで、地域のつながりを育み、命を中心とした暮らしの文化を根付かせていきます。
-. 効率や利益だけではない価値を大切にしながら、命と暮らしを支え、平和を土台とした地域社会を、市民とともに築いていきます。
-. 農と森林につながる豊かな地域と新たな働く場を自分たちの手で創り出すため、全国の仲間とともに、未来を切り拓く一歩をここから踏み出していきます。地域に根ざした仕事おこしを積み重ね、労協法が掲げる「持続可能で活力ある地域づくり」を実現していきます。
-.小農・森林ワーカーズが推進する小規模複合農業経営モデルを確立し、全国に広めていきます。
-.小農・森林ワーカーズは、三つの政策課題の実現をめざします。①食料自給体制の確立。②完全就労社会の実現。③地域共同体の再構築です。この運動は、人間の本質を取り戻す運動です。
地方・地域の衰退や少子高齢化の流れが止まらないのは、生命を育む第一次産業を犠牲にして、儲け本位の工業国家づくりを進めてきた結果です。地方・地域の再生・復興なくして、日本全体の再生・復興はあり得ません。私たちは、第一次産業を日本の基幹産業として再評価し、その推進を国家の根本政策とすることを提唱します。
すべての地域で、小農・森林ワーカーズがその中心を担えるよう、ともに奮闘しましょう。
内山節さん講演
質の高い仕事、暮らし探し出す時代
ヒントは過去に
哲学者の内山節さんは、東京と二重生活を続ける群馬県上野村の変化にも触れながら、「質の高い仕事・質の高い暮らし」をテーマに記念講演。

「私たちは、歴史はいい時代に向かっていると思っていたが、環境問題の視点が入ると、近代的な世界は完全に行き詰まってきたと認めざるを得ない。未来へのヒントは過去にしかない。自然を支え自然に支えられ、他者を支え他者に支えられているような仕事や暮らしがあった。みんなが共通して持ちはじめている問題意識は、質の高い仕事をして、質の高い暮らしをすること。『質の高い』とは何かを模索し始めている時代が今、展開している」と語りました。
特別・実践報告から
全国交流フォーラムでは、17年目に入った労協ワーカーズコープ山口の「みんなでつくってみんなで食べる田んぼ」の取り組みを始め、多様な切り口による小農・森林の実践が報告されました。(文責:編集部 国分、深谷北部、山口エリア・宇部、ふじみ野は、労協ワーカーズコープ・センター事業団)

特別報告
「つくらずにはいられない」
労協ワーカーズコープ山口 村﨑 忍さん

ワーカーズコープ山口は、1980年に山口県光市で公共事業の請負からスタート。今では約50人の組合員が公共の土木や緑化事業のほか、施設の清掃、高齢者施設や放課後デイサービスの運営などさまざまな事業に取り組んでいる。
「みんなでつくってみんなで食べる田んぼ」は、、お米を自分たちで作って自分たちで食べる「自産自消」の取り組み。2009年から行っている。
組合員同士が共通の体験を通じて交流できればとの思いから始めたが、当初は「儲かるのか」「経営になるのか」と否定的な声も多かった。また、田んぼを借りるのにも「素人には無理」と、地域から警戒され、苦労したが、試行錯誤を重ねながら米作りを続けた。
イノシシ被害や病害虫、草取りなど苦労は絶えず、何度もやめようと思ったが、それでも「全組合員に1人1俵60キロを配分する」という目標を共有し、13年目に達成。25年は過去最高の5536キロを収穫し、地主やお世話になった人たちにお裾分けしたり、市内の子ども食堂11カ所に1年分を贈呈したりすることができた。
今では田植えや稲刈りに多くの組合員や家族が集まり、作業後の交流も大きな楽しみに。さらに市民参加の小農・森林ワーカーズ「チームひかり」も立ち上がり、子どもたちとの田んぼづくりも始まっている。
協同労働とは、みんなで話し合い、決め、運営すること。その実感を田んぼづくりを通して得てきた。 「つくらずにはいられない」と思える関係や環境を地域の中につくることこそ、私たちの仕事だと感じている。
実践報告
小農で誰もが役割を持てる地域へ
鹿児島・国分地域福祉事業所ほのぼの 五十嵐秀久さん

霧島市で、就労継続支援B型や学童、放課後等デイサービスなどの事業を運営する中で、小農を進めている。
無農薬・無肥料の自然栽培で米や野菜を育て、子どもたちの昼食やおやつに活用し、「安心・安全な食」を地域で循環させることを大切にしてきた。
農業は就B利用者の大切な生産活動。毎月の「畑会議」で利用者と作付けを話し合って決めている。昨年は韓国岳(からくにだけ)の噴火や豪雨被害などに苦しみながらも700キロの米を収穫し、子どもたちと収穫体験も行った。
日本ミツバチの養蜂や杉苗づくり、竹林整備にも取り組み、竹炭は消臭材として販売。農作業を通じて、生きづらさを抱えた利用者が笑顔を取り戻す姿も。小農を通じ、子どもたちの豊かな体験と、誰もが役割を持てる持続可能な地域づくりを進めていきたい。
農業にある、仕事おこしの可能性
埼玉北部地福深谷とうふ工房 黒田康夫さん

とうふ工房は1995年、生協の物流センター再編で仕事を失った仲間が立ち上げた事業所。
原料の大豆を自分たちで作ろうと農業にも挑戦。最初は無農薬・無化学肥料で大豆づくりを行い、思いのほか豊作だったものの、雑草や虫害、本業との両立の難しさから、しばらくは農家委託に切り替えた。
10年前、私が農業専任となり、改めて大豆づくりを再開。地域の耕作放棄地や使われなくなった農機具などを活用しながら、現在は2町歩規模まで広がっている。
大豆だけでなく稲作や小麦づくりにも挑戦し、収穫した小麦でうどん、大豆で味噌づくりも。サポステやジョブセンターの利用者らと農業ボランティアにも取り組み、「誰もが一緒に働ける仕事」を実践している。
売り上げが十分ではなく、事業化の難しさも感じているが、地域の資源と人を生かした仕事おこしの可能性が農業にはあると思う。
農福連携で地域農業の担い手づくり
山口エリア 安部龍義さん、山口宇部事業所 中垣友作さん


平均年齢80歳を超える農事組合法人「ふるさと吉見」と連携し、76ヘクタールに及ぶ農地の半分以上を受託。
生活困窮者や生活保護利用者とともに、玉ねぎの収穫や、リモコン草刈機も駆使した急斜面の草刈り、水稲圃場管理を担っている。
農福連携を通じて、学校給食への供給や加工・流通まで含めた地域循環を創出し、「楽しく農業を続ける」という地域の強い思いを支えている。(安部さん)
山口宇部事業所では、国の「里山林活性化による多面的機能発揮対策交付金」を活用し、生活困窮者の就労支援として放置された竹林での枯れ竹の伐採や搬出、竹炭・竹チップづくりを進めている。
単なる作業受託にとどまらず、利用者が地域の環境を守る担い手に成長し、地主から「タケノコ掘りが楽になった」と感謝されるまでに。地域貢献につながるこの取り組みに意義を感じている。(中垣さん)
利用高齢者が野菜づくり 脱原発も実践
埼玉・ふじみ野そらまめ地福 島袋俊子さん

東日本大震災で福島から避難してきた人たちへの支援活動をきっかけに、交流会や畑づくりを始めた。そこから「自分の親を預けたくなるようなデイサービスをつくりたい」と、2012年にデイサービスそらまめを開所。
現在は古民家と畑を拠点に、利用者とともに野菜づくりや食づくりに取り組み、地域住民や学生、子どもたちとの交流も広がっている。
原発に頼らない生活と暮らしをと、太陽光発電の導入や建物の断熱工事を実施。築60年の建物が、高齢者の命を守る快適な空間になっている。
厳しさ増す商業農業 小農への転換必要
愛媛・地域協同組合無茶々園 大津清次さん

西予市明浜町で、52年間続く無農薬栽培の歴史を受け継ぎ、急傾斜の段々畑を家族総出で耕してきた先人たちの営みを残さなければと、16年前から1反2畝(せ)のみかん畑を開始。現在は1町歩規模まで広がっている。
農業は今、資材高騰や人件費上昇で厳しさを増しており、商業農業だけでは立ち行かない。だからこそ、自分たちが食べるものを自分たちでつくる「小農」への転換が必要だと感じている。
地域の人たちがつながりながら自給し、支え合う地域づくりこそ重要。高齢者や若者、海外実習生、副業農家など多様な人たちと協同しながら、新しい農業の形を実践していく。
「サミット」きっかけに生まれた農業塾
埼玉・滝瀬塾 小松崎湧太さん、成田誠さん、砂村育子さん、島野正紀さん、山本幸司さん

2024年に埼玉県桶川市、北本市で開かれた、「地域おこし名人・達人サミット」をきっかけに、荒廃農地の増加や農家の減少、食料危機への問題意識から立ち上った農業塾。
サミット発起人で、元埼玉県議会議長の滝瀬副次さんが所有する330坪の農地で、参加者が協同労働で農業に取り組み、公開講座や土づくりの学習会も開催。
無農薬で育てた大豆は90キロを収穫し、味噌づくりにもつながり、「畑仕事が心の支えになった」という参加者も。
多くの地域住民や支援者の無償の協力に支えられてきた。自分たちの食を自分たちで支える地域づくりをさらに広げていければ。
都市で「農」を通じた共創の輪広げる
東京・903シティファーム推進協議会 矢尾板初美さん

「農」と「食」を通じて、人と地域がつながる暮らしをつくろうと、2015年に設立。名称には、「90分圏内にもう一つの居場所を持ち、3割程度のお金に依存しない自律した生き方をつくる」という思いを込めている。
コミュニティカフェや「よみがえれ! 浅草田圃プロジェクト」などを展開し、ボランティアメンバーが主体的に運営。田圃PJは22年に文部科学省「青少年の体験活動推進企業表彰」で文科大臣賞を受賞した。
農地のない台東区で稲や野菜づくりに取り組み、子どもたちの成長や地域交流の広がりを生み出してきた。
地域や組織を超えた共創の輪をさらに広げていきたい。